忍者ブログ
95  94  93  92  91  90  89  88  87  86  85 
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

拍手下さった方、ありがとうございますv



↓ちょっと…思ったよりも長くなる予感……

 ジャックはその晩眠る事が出来なかった。
 ベッドに腰を下ろした彼の手の中には、銀色の輝きがあった……。
 触れただけで、人を紙のように簡単に切り裂いてしまう鋭い刃を眺め、ジャックはこの後で自分が取るべき行動を考えていた。
 昨夜感じた気配は、一人…いたとしても少人数である事は確かだった。どんなに自分自身のコンディションが悪くとも……、ジャックはスネークを巻き込みたく無かった。昨夜の人物は、ジャックを標的にしている……。スネークもあの気配を感じたなら、ジャックに言わないと言う事は無い筈だ。
 サイドテーブルの引き出しを開け、ジャックはナイフをしまった。
 気の重い作業だが、…ジャックはこれからの事を考えた。
 スネークをどうやってここから離すか……、自分と一緒にいればスネークにも被害が及ぶ。ジャックはスネークに被害が及ぶ事が怖かった……。自分が傷つけられるのは構わない、いっそのことここで死んでしまってもいいと思っているジャックだったが、スネークにもしもの事があったら……、そう思っただけで血の気が引いて体中が冷たくなった……。
 ジャックは立ち上がるとトレーニングウェアに着替えた。
 昨日はただ存在を知らせただけだが、あの殺気はいずれ自分の命を狙う……。ジャックは不思議な高揚感を覚えていた。自分のテリトリーに戻ったような安心感があった。
 結局、自分は安全を約束され、誰かに守られるような暮らしは出来ない……。その思いはチクリとジャックの胸を刺したが、その痛みは今までの人生の大半を占めて来た物だった。
 スネークの事が好きだった……。ジャックは閉めた窓に近づいて、カーテンの陰から森を見た。あの森の中に、昨夜の殺気の主はいない。だが、それは今だけの事だ……。あの粘りつくような気配は、簡単な事で離れて行くとは思えない。
 引き摺らなくても歩けるようになった足だが、今のままではあの気配に勝つ事は出来ないとジャックには思えた。そしてあの気配の主も、それを知っている……。根拠の無い事だったが、ジャックにはそれが確信できる。
 あの殺気はジャックの回復を待っている……。自分がそれほど人からの恨みを買う覚えは無かったが、リベリアでの時代を思えばジャックの知らない所でどのような恨みを持たれるかは判らない。
 ……ソリダスに関係した事かも知れない……。
 ソリダスを葬った事、…それだけは事実だった。何もかもが嘘で塗り固められた中で、人の死だけは現実の物だった。その残酷さにジャックは背筋の寒くなる物を覚えた。まるで予定調和のように人の死を扱う、愛国者たちと言う存在、昨日の来訪者は愛国者たちからの監視なのかもしれない……。そうだとすれば、尚更スネークをここに引きとめる事は出来ない。
 ジャックは窓の下に座り込んだ。
 毎日のようにジャックに好意を伝えるスネーク、それがビッグシェルでの贖罪の為だとしても、ジャックはいつの間にかスネークに依存していた。そんな自分に気付いてしまっては、一人になる事が怖くて仕方が無い。本当はスネークを失いたくないのだ……。スネークの言葉に、僅かでも本当の心があるのならば、それに縋りたいと思ってしまう。
 スネークに恋をしている……。どちらにしても失う事になるスネークに、今更そんな思いを持った所で自分にはどうする事も出来ないのだ……。
 膝を抱え込んだジャックの肩が、小さく震えていた。堪えた嗚咽が静かな部屋の中に流れ出す。……最後に泣いたのはいつだったか、ジャックには思い出せないほど遠い昔に感じた。目の前で両親を殺され、最後まで自分を守ろうと伸ばされた母親の手を見ても、ジャックは驚愕のあまり涙を流す事さえ出来なかった。訓練の為に入れられたキャンプは、劣悪すぎる環境と、寧日ない暴行の連続……、ジャックは泣く事さえ忘れて生きなければならなかった。
 スネークならば、自分をこの落ち込んだ穴の中から援け出してくれるかもしれないと思っていた……。
 記憶に障害があったとはいえ、ソリダスに似たスネークに惹かれてしまった事に、ジャックはショックを覚えていた。ジャックが囚われた地獄を作り出したソリダス、ジャックの身も心も壊してしまったソリダス、…スネークにその面影を重ねて見ているのだとしたら、自分は一生涯ソリダスから逃れられないのだ。しかし、ソリダスとスネークは全くの別人だった。同じ男の遺伝子を持つ二人だが、個々の違った人格だった。ここでの暮らしの中で、ジャックはより一層スネークに惹かれた。からかうような口調でも、スネークはいつもジャックの事を気遣ってくれた。ジャックはこんな風に人に接してもらった記憶が無い。ソリダスの元から保護された時にさえ、ジャックは環境の変化に気付けなかったほどなのだ。
「……スネーク……」
 嗚咽の中に名前を呼んでいた……。初めて一緒にいて欲しいと思った人だった。いつまでも、…いつまでも自分の側にいて欲しいと思った。いつ自分は置き去りにされるのか……、不安を抱えながらでも、スネークはいつもその不安ごと抱き締めてくれた……。ジャックが告げられない思いを持っている事を、まるで知っているかのようにスネークは黙って抱き締めてくれた。
 自分からあの腕を手放さなければならないと思うと、ジャックは胸の中が痛くて…痛くて堪えられなくなりそうだった。
PR
NAME
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS
TRACKBACK URL 
検索さま

お世話になっています。
bookmark
SnR
4Qno.5
PARTHIAN SHOT
R-BOX
KARIMRRO
3M
リンクフリーのお言葉に甘えて、bookmarkしています。
profile
HN:
mouhu
性別:
女性
自己紹介:
何かございましたら、niibara☆hotmail.ne.jp(☆を@に変えてください)までお願い致します。

本宅無双
別宅BASARA
バーコード
最新トラックバック
ブログ内検索
"mouhu" WROTE ALL ARTICLES.
PRODUCED BY SHINOBI.JP @ SAMURAI FACTORY INC.
忍者ブログ [PR]