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拍手下さった方、ありがとうございますv




↓ジャックがいじいじしてます

 スネークを乗せた船が行ってしまうと、ジャックは一人でストレッチを始めた。スネークとのリハビリのおかげで、ジャックは普段の生活に支障がない程度には回復していた。だが、ジャックは以前の運動能力を取り戻さなければならないのだ。
 ……待っている……。ジャックがあの夜感じた殺気は、ジャックを待っているのだ。あの状態でなら、『彼』は易々とジャックを狩る事が出来た筈だ。姿の判らない敵だったが、ジャックはそれが男だと言う事は確信していた。観察に続いて、自分の匂い付けをしたがるのは、やはり雄と言う生き物の本能なのだろう。窓に残されたナイフを見て、ジャックは森に潜んでいた殺気が男だと確信をした。そして、『彼』はジャックの回復を待っている……。容易く狩れる獲物を狩らないのは、いつでも好きな時にその獲物を捕らえる事が出来ると言う自信でもあるが、ジャックにはそれ以上に『彼』が自分を待っているように思えて仕方がなかった。
 十分にストレッチを行って、股関節や踝の関節を伸ばすと、先週届いたルームランナーに乗った。外を走っても構わなかったが、小さな島には砂浜と森しかない為に、まだジャックの足には負荷が大きすぎると言ってスネークが発注した物だ。
 骨折の治療は関節の柔軟さを取り戻すことと、動かないでいた間に衰えた筋肉の再生だと言えるだろう。ジャックの場合は常人であれば半年はかかると言われた複雑骨折を、約ひと月で完治に近いところまで回復していた。これはジャックの元々持っていた自己治癒能力の高さを使って、医療チームが実験を行った結果だった……。一歩間違えば、ジャックは外骨格サイボーグ化をしていたかも知れないのだ。骨の治癒はほとんど済んでいたが、関節はどうにもならない。骨の再生中は固定をせざるを得なかった為に、関節は普通の骨折治療のように固まってしまっている。
 1時間ほどジョギングのペースで走った後、丁寧に関節を解す。スネークがいれば、ジャックの足をマッサージしてくれたが、……スネークをジャックは追い出してしまった。
 自分で決めた事だったが、ジャックは心の底が冷えて行くような感覚がしていた。
 スネークと一緒にいる間、殺戮機械であった事も虐待も、ジャックは忘れる瞬間があった。だが、一人きりでこうしていると、ジャックは嫌でも過去に引き戻された。『彼』の気配は感じないが、自分自身で自分を守らなければならないと言う事実は、ジャックの子供時代と同じだった。
 安心して眠る事さえ出来ない生活、それとは決別できたと思っていた……。
 夢を見ずに眠れるだけで、ジャックには幸せだった。ジャックの眠りは、常に悪夢に付き纏われていた。……スネークの気配を同じ家の中に感じるだけで、ジャックは何の夢も見ずに眠れていた事に気付いた。
 結局は、どこにも逃げられない。
 ソリダスがいなくなっても、ジャックは自由にはなれなかった。合衆国は、否、愛国者たちはジャックをこの先も体のいい実験動物として手放さないだろう……。『彼』は愛国者たちと関係があるのか、それは判らなかったが、ジャックに対しての敵意は感じられる。
 ジャックは関節を解し終わると、冷蔵庫からプロテインを取り出して飲んだ。昨夜はスネークの作ってくれた夕食にも手をつけていなかった。スネークを拒絶すると決めたからには、あの暖かい食卓につくわけにはいかなかった。
 ……自分で決めた筈だったが、ジャックは胸の中に広がる虚無感をどうする事も出来なかった。
 最後にジャックに触れたスネークの温もり、彼は全身でジャックを受け止めようとしてくれたのだ。あんな風にすべてを受け止めてくれた腕を、ジャックは知らなかった。人形のように応えないジャックでさえ、スネークは根気強く愛してくれた。
 ……愛してくれていた。
 ジャックは手にしていたプロテインのボトルを壁に投げつけた。
 スネークは愛してくれたのだ。同情でも責任感でも無く、ジャックを愛してくれていた。
 今ならば、ジャックにも判る。スネークの顔を見てしまうと、不安になって信じる事が出来なかったが、スネークが去って行って初めてジャックには彼の心が伝わった。
「……スネーク…」
 思わず呟いた自分の声に、ジャックは辺りを見回した。気配は感じられないが、こんな自分を『彼』はどこかで笑っているように感じた。
 スネークはもういない。
 自分の態度を思い返しても、ソリダスを引き合いに出してまで傷つけた事を思っても、スネークがもう一度自分に振り向いてくれるとは思えなかった。
 ジャックは床に座り込むと、壁にもたれかかって外を見た。
 テラスの大きな窓の外は、真っ青な空が見えた。…スネークがここに来た日も、空はこんな風に晴れていた。
 済み渡った空に、真っ白な雲だけが浮かんで、……あの日もジャックはここでスネークが歩いて来るのを見ていた。
 スネークとソリダスはまるで正反対だった。ジャックから何もかも奪って行ったソリダス、何も無くなって空っぽになったジャックを埋めるように与えてくれたスネーク、…ビッグシェルで何故彼らの顔が似ているなどと思ったのだろう……、ジャックはぼんやりと空を見上げた。
『暑いところもいいが、雪が降る空もいい…』
 スネークが何気なく言った事があった。あれは、自分を誘ってくれていたのだ……。そう思うと、ジャックは胸が痛んだ。
 今はスネークを信じる事が出来るのに、あの腕が自分を守ってくれたのだと思えるのに……、スネークはここにはいない。ジャックが自分の手で追い払ってしまった……。
 ここには、真っ青な空しか無かった。
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