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↓スネ雷です。
業火から続いています。
業火から続いています。
アラスカに戻ったオタコンは忙しそうだった。
フィランソロピーを解散して、資金繰りは今まで以上に厳しかったが、暇だけはあったはずだった。情報収集にハッキングする以外は、オタコンは過去に開発した物を民間の玩具メーカーなどに売り込んで資金を作るだけだったが、今回の外出の後は珍しく忙しそうだった。
一方のスネークは、…酷い鬱状態に陥っていた。
ジャックのせいばかりとも言えないのだが、何もしてやれなかったという思いが、スネークの中に濃い影を落としていた。自分の任務を全うする。スネークはそれ以外には無関心なように見えるが、実際は行動の元は情に繋がる事が多かった。
誰かを救いたい。
誰も彼も救う事など出来ないだろうし、イデオロギーの違いは敵対関係を生むが…絶対の正義などはない。正義のヒーローなどは生まれない時代なのだ。
長く戦場を離れている事も、スネークの精神に影響を与えている。忌わしい戦場でありながら、スネークはそれ無しには生きては行けないのだ。
「スネーク。そろそろ食事をしたらどうだい?僕も軍用レーションは食べ飽きたよ」
ひと段落付いたのか、帰って来てからずっと自分の部屋に籠っていたオタコンがリビングのスネークに声をかけた。オタコンも初めてスネークの鬱に遭遇した時はどうしていいか判らなかったが、今ではもう慣れてしまっていた。元々、オタコンは他人に深い関わりを持たないようにしていた。…していたと言うよりは、出来ないのだ。誰かの中に深く踏み入る事も、自分の中に踏み入らせる事も、どちらもオタコンには出来ない事だった。それがもとで、義妹とも理解しあう事は出来ないまま…、もう二度と会う事は出来なくなってしまった。
…ソファに埋まり込むように座ったスネークは、オタコンの方も見ようともしなかった。手の中には小さな木片とナイフがあるが、昨日から全く形が変わっていないようだった。
「…僕ももう少し仕事があるから……、片付いたら何か食べに行こうか」
落ち込んだスネークを浮上させる事は、オタコンには一度も出来た事が無かった。いつも、スネークは一人で戻って来た。無理矢理に引き摺り出される戦場以外に、スネークの精神を高揚させるものは無いに等しかった。
自分の部屋に戻ったオタコンは、幾つか暗号化したファイルをやり取りしてからデスクトップの脇に置いたフィギュアを手に取った。…ただの憧れだった。二足歩行型のロボットを作って…、それが何を成すかなど考えもしなかった。
「…スネーク…」
そっとフィギュアを机に戻して、オタコンが眼鏡を外した。
スネークは自分の血の源の罪を購う為に戦っている。
「…君は一人じゃ無いんだけど……」
鼻梁を揉み解して、モニターのスウィッチを入れる。
オタコン…、ハル・エメリッヒも自分の血筋の為に戦っているのだ。たとえ、同機は科学への純粋な憧れであっても、エメリッヒ家は殺戮兵器に関わり過ぎていた。反メタルギアのNPOを作ろうと思ったのも、スネークと共に戦おうと思ったのも…、戦争で不幸になる人を無くしたかったからだ。
ぼんやりとモニターを見つめていたオタコンの眼の中に、目当てのメールが届いた事を知らせるポストペットが飛び込んできた。
すぐさまメールを解読して、オタコンが立ち上がった。ボストンバッグに簡単な旅行の準備をして、航空券の予約の為に携帯電話を取り出した。
オタコンは自室を出て、深い鬱の海に沈みこんでいるスネークの所に小走りに駆け寄った。
「スネーク、出掛けてくるよ。…僕が戻ってきたら、君はこんなに優雅にはしていられないからね。今のうちにのんびりして置くといいよ」
自分の部屋から持ち出した軍用レーションをスネークの前に置くと、スノーモービルの置いてある物置まで普段のオタコンからは想像も出来ないような俊敏さで出て行った。
新しい命。
今、彼が迎えに行こうとしているのは、まさに新しい命だった。
スネークがメタルギアRAYの為に潜入したタンカーで戦ったロシア人女性、オルガ・ゴルルコビッチの娘を引き取りに行くのだ。…ビッグシェル事件の時には、愛国者達に人質に取られていたオルガの娘を、オタコンは追跡していた。最近になって居所が解ったのだが…、人質救出をスネークにさせるリスクは大き過ぎた。ビッグシェル以降のスネークは躁鬱の発作の周期が短くなり、常人としたら健康を激しく害しているような状況だった。オタコンも医者ではない為に、スネークの状況ははっきりとは判らなかったが、FOXDIEの影響も考えないわけにはいかなかった。
……そして、オタコンの選択肢はジャックに向かった。ローズとの生活にも不協和音の絶えない様子からも、ジャックを一度ミッションに戻す事も荒療治ではあるが、効果を望めると思った。
ジャックの返事は承諾だったが、それには一つ条件があった。ミッションに入る前に、何日間かスネークをアラスカに一人にしておいて欲しいと言うのが、ジャックの出した条件だった。スネークにはミッションの事を伝えないと言う約束で、オタコンはその条件を飲んだ。そして、現在のスネークの状態に直面しているのだが……、どれほどジャックが有能な兵士であろうと、生き死にの確約の出来ないミッションを依頼するのだ、オタコンも結果を知りながら条件を飲むしか無かった。
スノーモービルのエンジンをかけ、オタコンがコートの襟を立てた。…襟を立てたくらいで凌げる寒さでは無いが、自分だけがぬくぬくとチェスでも楽しむように戦略を練っているような状態を思えば、それでも足りないくらいだった。
ウルフドッグの遠吠えに送られ、オタコンがスノーモービルを走らせた。
新しい命。オルガの幼い娘を自分たちの所に引き取る事は、新たな不幸を呼ぶ事かも知れない。それは、彼にも…、誰にも判らない事だったが、動き出し、絡み合う運命は誰にも解く事は出来なかった。
新しい命……。
その無垢なる魂を連れて来る者の変化を知り、オタコンが新たな苦悩を抱える事になるのは、後僅かな時間の後だった。
母が偽りの姿として選んだサイボーグ忍者…、今、オルガの娘は外骨格の強化装備を纏った男に連れられて、新たな運命に引き継がれようとしていた。
フィランソロピーを解散して、資金繰りは今まで以上に厳しかったが、暇だけはあったはずだった。情報収集にハッキングする以外は、オタコンは過去に開発した物を民間の玩具メーカーなどに売り込んで資金を作るだけだったが、今回の外出の後は珍しく忙しそうだった。
一方のスネークは、…酷い鬱状態に陥っていた。
ジャックのせいばかりとも言えないのだが、何もしてやれなかったという思いが、スネークの中に濃い影を落としていた。自分の任務を全うする。スネークはそれ以外には無関心なように見えるが、実際は行動の元は情に繋がる事が多かった。
誰かを救いたい。
誰も彼も救う事など出来ないだろうし、イデオロギーの違いは敵対関係を生むが…絶対の正義などはない。正義のヒーローなどは生まれない時代なのだ。
長く戦場を離れている事も、スネークの精神に影響を与えている。忌わしい戦場でありながら、スネークはそれ無しには生きては行けないのだ。
「スネーク。そろそろ食事をしたらどうだい?僕も軍用レーションは食べ飽きたよ」
ひと段落付いたのか、帰って来てからずっと自分の部屋に籠っていたオタコンがリビングのスネークに声をかけた。オタコンも初めてスネークの鬱に遭遇した時はどうしていいか判らなかったが、今ではもう慣れてしまっていた。元々、オタコンは他人に深い関わりを持たないようにしていた。…していたと言うよりは、出来ないのだ。誰かの中に深く踏み入る事も、自分の中に踏み入らせる事も、どちらもオタコンには出来ない事だった。それがもとで、義妹とも理解しあう事は出来ないまま…、もう二度と会う事は出来なくなってしまった。
…ソファに埋まり込むように座ったスネークは、オタコンの方も見ようともしなかった。手の中には小さな木片とナイフがあるが、昨日から全く形が変わっていないようだった。
「…僕ももう少し仕事があるから……、片付いたら何か食べに行こうか」
落ち込んだスネークを浮上させる事は、オタコンには一度も出来た事が無かった。いつも、スネークは一人で戻って来た。無理矢理に引き摺り出される戦場以外に、スネークの精神を高揚させるものは無いに等しかった。
自分の部屋に戻ったオタコンは、幾つか暗号化したファイルをやり取りしてからデスクトップの脇に置いたフィギュアを手に取った。…ただの憧れだった。二足歩行型のロボットを作って…、それが何を成すかなど考えもしなかった。
「…スネーク…」
そっとフィギュアを机に戻して、オタコンが眼鏡を外した。
スネークは自分の血の源の罪を購う為に戦っている。
「…君は一人じゃ無いんだけど……」
鼻梁を揉み解して、モニターのスウィッチを入れる。
オタコン…、ハル・エメリッヒも自分の血筋の為に戦っているのだ。たとえ、同機は科学への純粋な憧れであっても、エメリッヒ家は殺戮兵器に関わり過ぎていた。反メタルギアのNPOを作ろうと思ったのも、スネークと共に戦おうと思ったのも…、戦争で不幸になる人を無くしたかったからだ。
ぼんやりとモニターを見つめていたオタコンの眼の中に、目当てのメールが届いた事を知らせるポストペットが飛び込んできた。
すぐさまメールを解読して、オタコンが立ち上がった。ボストンバッグに簡単な旅行の準備をして、航空券の予約の為に携帯電話を取り出した。
オタコンは自室を出て、深い鬱の海に沈みこんでいるスネークの所に小走りに駆け寄った。
「スネーク、出掛けてくるよ。…僕が戻ってきたら、君はこんなに優雅にはしていられないからね。今のうちにのんびりして置くといいよ」
自分の部屋から持ち出した軍用レーションをスネークの前に置くと、スノーモービルの置いてある物置まで普段のオタコンからは想像も出来ないような俊敏さで出て行った。
新しい命。
今、彼が迎えに行こうとしているのは、まさに新しい命だった。
スネークがメタルギアRAYの為に潜入したタンカーで戦ったロシア人女性、オルガ・ゴルルコビッチの娘を引き取りに行くのだ。…ビッグシェル事件の時には、愛国者達に人質に取られていたオルガの娘を、オタコンは追跡していた。最近になって居所が解ったのだが…、人質救出をスネークにさせるリスクは大き過ぎた。ビッグシェル以降のスネークは躁鬱の発作の周期が短くなり、常人としたら健康を激しく害しているような状況だった。オタコンも医者ではない為に、スネークの状況ははっきりとは判らなかったが、FOXDIEの影響も考えないわけにはいかなかった。
……そして、オタコンの選択肢はジャックに向かった。ローズとの生活にも不協和音の絶えない様子からも、ジャックを一度ミッションに戻す事も荒療治ではあるが、効果を望めると思った。
ジャックの返事は承諾だったが、それには一つ条件があった。ミッションに入る前に、何日間かスネークをアラスカに一人にしておいて欲しいと言うのが、ジャックの出した条件だった。スネークにはミッションの事を伝えないと言う約束で、オタコンはその条件を飲んだ。そして、現在のスネークの状態に直面しているのだが……、どれほどジャックが有能な兵士であろうと、生き死にの確約の出来ないミッションを依頼するのだ、オタコンも結果を知りながら条件を飲むしか無かった。
スノーモービルのエンジンをかけ、オタコンがコートの襟を立てた。…襟を立てたくらいで凌げる寒さでは無いが、自分だけがぬくぬくとチェスでも楽しむように戦略を練っているような状態を思えば、それでも足りないくらいだった。
ウルフドッグの遠吠えに送られ、オタコンがスノーモービルを走らせた。
新しい命。オルガの幼い娘を自分たちの所に引き取る事は、新たな不幸を呼ぶ事かも知れない。それは、彼にも…、誰にも判らない事だったが、動き出し、絡み合う運命は誰にも解く事は出来なかった。
新しい命……。
その無垢なる魂を連れて来る者の変化を知り、オタコンが新たな苦悩を抱える事になるのは、後僅かな時間の後だった。
母が偽りの姿として選んだサイボーグ忍者…、今、オルガの娘は外骨格の強化装備を纏った男に連れられて、新たな運命に引き継がれようとしていた。
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