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あけまして、おめでとうございます。

今年ものんびり更新して行こうと思っています。
よろしかったら、お付き合いくださいませv



↓スネ雷ご来光

 雪しか無い地平に、金色の光が薄い線になって拡散した。
 陽炎が立つように光の波が地平から沸き上がり、眩しい金色の日が昇り始める。
 暗い空を切り裂き金色の矢が飛び立つように、朝日が昇って行く。プルシャンブルーの空は、一瞬のバラ色の後に澄み切ったセルリアンブルーになった。
 新しい年の生まれる瞬間、ジャックは温もりに背を包まれてその光景を眺めていた。
「…綺麗だ……」
 薄い唇から声が漏れた。
 どんな景色を見ても、ジャックはその土地の戦略的価値を考えていた。そこが美しい場所だとか、居心地のいい場所だとか、そんな事は思ってみた事も無かった。
 こんなにも空は美しかったのか、広く眼前に広がる雪原は、遠くに見える人の暮らす灯りは、……世界はこんなにも美しかったのか……。
 ジャックは瞳の奥が熱くなった。目を閉じても、生まれたての朝の残像はジャックの眼に残っている。まるで朝日の矢に射られたように、ジャックは瞳から鼻の奥が痛くなった。
「ああ、綺麗だ」
 ジャックの肩を抱き締めた男は、深く沁みわたるような声で言った。
「朝日に映えて、お前さんの髪がすごく綺麗だ…」
 スネークの唇が、ジャックの髪にキスをした。細い絹のような髪は、暖炉の薪の燃える匂いがした。
「ジャック」
 髪を掻きわけるようにして耳にキスした唇は、冷たい頬を流れる涙にも口づけた。
 美しいジャック。何者も傷つける事の出来なかったダイアモンドは、スネークの腕の中にいた。
 ジャックは自分を抱くスネークの腕を抱き締めた。熱くなった瞼の中からは、止めどなく涙が溢れていた。
 美しい世界をくれたのは、スネークだった。伝説の英雄は、本当にジャックを救い出してくれた。彼がいなければ、ジャックはこの世界を取り戻す事は出来なかったのだ。
 小刻みに震えているジャックの髪を、スネークの掌が撫でた。……こんなにも、ジャックは可愛らしかった。乾涸びたようなジャックの心に、スネークはありたっけの愛情を注ぎたいと思った。水を与えれば、枯野にも花は咲く事が出来る……。スネークはジャックの中に感情と言う花が咲くのを見たかった。
 人としての感覚を取り戻す行程は、ジャックに痛みももたらすだろう。良い事ばかりでは無い事も、スネークには判っている。受け入れる事の出来ない感情も、この世にある事を彼はちゃんと知っている。だが、その痛みを越えれば、本当の人としての感情を得る事が出来る。本物の悲しみ、本物の嘆き、それらを乗り越えて、本物の歓喜に満ちた幸福もえる事が出来る。
「ジャック」
 優しく髪を撫でるスネークの声が、ジャックの耳を通して心の中に沁みわたって行く。
 真っ青に澄んだ空のように、ただ美しく澄んだ心を持った者はいない。誰もが己の幸福を願い、己の為の生を生きる事を望んでいる。それは人の本能だ。人間も動物であるならば、それは生きる本能なのだ。
「俺はそろそろ暖かい暖炉の前で、…コートを脱いだお前を抱きたいんだが」
 スネークの腕に顔を埋めたジャックが、小さく笑った。
「うん…俺もそう思ってた」
「気が合うな」
 スネークのコートの袖でごしごしと顔を擦っているジャックの髪を、スネークが掻き混ぜた。
 振り返ったジャックのくしゃくしゃになった髪に、太陽の光が踊っていた。
 深いブルーの空に浮かんだ白銀の太陽。光の矢は、戦士たちを傷つける事は無かった。
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