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お久しぶりです
↓パラレルじゃ無い方のスネ雷です
↓パラレルじゃ無い方のスネ雷です
無造作にバスタオルを被ったジャックは、適当に体に残った水滴を払うと小さな水溜りを作りながらバスルームを出た。
毎回スネークに文句を言われるのだが、ジャックは床に出来た染みに頓着するような事は無かった。自宅で寛いでいるのに、足跡を消す必要を感じないと言うのがジャックの言い分だった。これだけをとっても判るように、ジャックは生活に関しての一般的な部分が欠落していた。無精とかと言ったレベルでは無く、欠落と言うのが一番しっくりくるようだった。
キッチンで冷蔵庫を覗いたが、牛乳は切れたまますぐに飲めるような物は何も入っていなかった。濡れた足跡はリビングに戻り、隅に置かれたウォーターサーバーの前に水溜りを作った。毎週のように床に蜜蝋のワックスを掛けている男が見たら、盛大に眉を顰める事は間違いない。
紙コップに水を汲むと、ジャックは濡れたままの体でソファに寝転んだ。布張りのソファはジャックが使うようになってから染みだらけになったが、本人は全く気にも留めていなかった。
髪からも雫が落ちている。部屋の中には薪の燃える匂いが立ちこめて寒さを感じる事は無かったが、ジャックは髪に被っていたバスタオルで肩を覆った。
猫が寝床を作るように、ジャックがソファの上を転々としていると、ウッドデッキの出入口のドアが開いた。
「あ……おい、何度言えば判るんだよ」
素っ裸でソファを濡らしているジャックに近づいたスネークは、冷たい手でジャックの耳を掴んだ。
「いたっ…」
冷たく硬い指先が、ジャックの薄い耳朶を掴んで引っ張る。
「バスルームからは裸のまま出て来ない。髪はタオルに包んでくる。濡れた足で床を歩かない」
一つ言う毎にスネークはジャックの耳を引っ張った。
「痛い、痛いよ、スネーク」
陽が昇る前にはあんなにも情熱的で優しかった指なのだが、……今は躾をする飼い主のように冷たくて固いスネークの指に、ジャックは顔を顰めて睨みつけた。
「あいつらは怒らないのに……」
ジャックがあいつらと言うのは、庭に放された犬達の事だ。
「お前は犬か?犬じゃないなら、バスルームで身支度を済ませてから出て来い」
呆れたように言って立ち上がろうとしたスネークに、ジャックが飛びついた。
「おいおい」
ほっそりとした外見のジャックだが、流石にスネークも軽々とは受け止められなかった。
床に仰向けに倒れたスネークに、ジャックが馬乗りになって押さえ込んだ。
「犬だから……」
濡れた髪から滴り落ちた水滴が、スネークの瞼に落ちた。
「あんたの犬でいいから……」
色の薄い瞳の中には、本物の犬のように真摯な光が宿っていた。
「飼い犬になりたいか……?」
スネークの手が、ジャックの頬を包み込んだ。
ジャックもそうだが、スネークも飼い犬だった。飼い主は変わっても、常にリードに引き摺られて生きて来た。自分自身で選んだ道のようにも見えるが、常に運命は選択肢を一つしか用意していなかった気がする……。
「……うん」
スネークにも覚えのある事だった。自分で自分を飼わなければならない不安、不意に目標を見失ってしまったらどうすればいいのか……。
「あんたの犬がいい……」
自由を望んでいた筈だった。
物心がついた頃から、自由になれる日を待ち焦がれていた筈だった。
「……スネーク………」
淡い瞳の色が、伏せた睫毛の中に隠れた。
……飼い主がいない事は怖い。常に紐の付いた生活をして来た体は、自由が怖くて仕方がない。
「俺の躾は厳しいぞ…?」
ジャックの頭を引き寄せたスネークの目尻に、笑い皺が浮かんだ。
「うん……何でも言う事を聞くよ」
キスを強請るような唇に、スネークはそっと口づけた。
「じゃぁ……、もう、俺の側を離れるな。判ったか?」
濡れた髪を撫でながら、スネークの深い声がジャックの耳に直に囁いた。
一番簡単で、一番難しい事。
「……うん…、離れないよ」
一番難しくて、一番簡単な事。
ジャックには引き綱が必要だった。
毎回スネークに文句を言われるのだが、ジャックは床に出来た染みに頓着するような事は無かった。自宅で寛いでいるのに、足跡を消す必要を感じないと言うのがジャックの言い分だった。これだけをとっても判るように、ジャックは生活に関しての一般的な部分が欠落していた。無精とかと言ったレベルでは無く、欠落と言うのが一番しっくりくるようだった。
キッチンで冷蔵庫を覗いたが、牛乳は切れたまますぐに飲めるような物は何も入っていなかった。濡れた足跡はリビングに戻り、隅に置かれたウォーターサーバーの前に水溜りを作った。毎週のように床に蜜蝋のワックスを掛けている男が見たら、盛大に眉を顰める事は間違いない。
紙コップに水を汲むと、ジャックは濡れたままの体でソファに寝転んだ。布張りのソファはジャックが使うようになってから染みだらけになったが、本人は全く気にも留めていなかった。
髪からも雫が落ちている。部屋の中には薪の燃える匂いが立ちこめて寒さを感じる事は無かったが、ジャックは髪に被っていたバスタオルで肩を覆った。
猫が寝床を作るように、ジャックがソファの上を転々としていると、ウッドデッキの出入口のドアが開いた。
「あ……おい、何度言えば判るんだよ」
素っ裸でソファを濡らしているジャックに近づいたスネークは、冷たい手でジャックの耳を掴んだ。
「いたっ…」
冷たく硬い指先が、ジャックの薄い耳朶を掴んで引っ張る。
「バスルームからは裸のまま出て来ない。髪はタオルに包んでくる。濡れた足で床を歩かない」
一つ言う毎にスネークはジャックの耳を引っ張った。
「痛い、痛いよ、スネーク」
陽が昇る前にはあんなにも情熱的で優しかった指なのだが、……今は躾をする飼い主のように冷たくて固いスネークの指に、ジャックは顔を顰めて睨みつけた。
「あいつらは怒らないのに……」
ジャックがあいつらと言うのは、庭に放された犬達の事だ。
「お前は犬か?犬じゃないなら、バスルームで身支度を済ませてから出て来い」
呆れたように言って立ち上がろうとしたスネークに、ジャックが飛びついた。
「おいおい」
ほっそりとした外見のジャックだが、流石にスネークも軽々とは受け止められなかった。
床に仰向けに倒れたスネークに、ジャックが馬乗りになって押さえ込んだ。
「犬だから……」
濡れた髪から滴り落ちた水滴が、スネークの瞼に落ちた。
「あんたの犬でいいから……」
色の薄い瞳の中には、本物の犬のように真摯な光が宿っていた。
「飼い犬になりたいか……?」
スネークの手が、ジャックの頬を包み込んだ。
ジャックもそうだが、スネークも飼い犬だった。飼い主は変わっても、常にリードに引き摺られて生きて来た。自分自身で選んだ道のようにも見えるが、常に運命は選択肢を一つしか用意していなかった気がする……。
「……うん」
スネークにも覚えのある事だった。自分で自分を飼わなければならない不安、不意に目標を見失ってしまったらどうすればいいのか……。
「あんたの犬がいい……」
自由を望んでいた筈だった。
物心がついた頃から、自由になれる日を待ち焦がれていた筈だった。
「……スネーク………」
淡い瞳の色が、伏せた睫毛の中に隠れた。
……飼い主がいない事は怖い。常に紐の付いた生活をして来た体は、自由が怖くて仕方がない。
「俺の躾は厳しいぞ…?」
ジャックの頭を引き寄せたスネークの目尻に、笑い皺が浮かんだ。
「うん……何でも言う事を聞くよ」
キスを強請るような唇に、スネークはそっと口づけた。
「じゃぁ……、もう、俺の側を離れるな。判ったか?」
濡れた髪を撫でながら、スネークの深い声がジャックの耳に直に囁いた。
一番簡単で、一番難しい事。
「……うん…、離れないよ」
一番難しくて、一番簡単な事。
ジャックには引き綱が必要だった。
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