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拍手下さった方、ありがとうございますv


↓やっと動きが出そうです

 ジャックの体は、ほぼ元通りと言ってよかった。常人とは思えないような、驚異的な回復だった。それには、彼の精神状態も強く影響していたのだろう。自分の体以外に向き合う者の無い孤独、そして姿の見えない敵意。その二つが、ジャックの自己治癒能力を飛躍的に上げていたようだった。彼の持っている資質だけではなく、過去の生活もジャックの体を回復させるのに役立った。一般人とアスリートを比べてみれば良く判るが、怪我の頻度の高いアスリートの方が、常に運動をする機会を持たない一般人に比べ回復は早い。ジャックは戦場と言う待ったなしの世界にいたわけだ、そこで弱っていては真っ先に切り捨てられてしまう。怪我をしない事も重要ではあったが、怪我の回復が早いのも大事な資質の一つだった。
 今のジャックは、完全にあの頃に戻っていた。
 『彼』の存在がいやが上にも、ジャックを過去に引き戻しているのだ。ジャックが知っている世界、『彼』の気配はその世界を彷彿とさせた。スネークがいた時には、忘れる事が出来るのではないかと思った世界に、ジャックは完全に戻っていた。
 定時に降る雨が過ぎ、ジャックが今日のノルマを終える頃に、…その気配は唐突に現れた。
 雨雲が去って、夕焼けの赤が空を埋め尽くす時間、鳥たちが森へと帰って行く時刻でもあるのだが、……鳥たちは森へは帰らなかった。ジャックのコテージの周りにいた鳥たちも、普段の日ならば森へ帰るのだが、いつまでも屋根の上を飛び立たない鳥にジャックは時が満ちたのを知った。
 『彼』はまるでジャックの様子を見ていたかのように、今日の日を選んだようだった。
 黒く塗潰されて行く森を眺め、ジャックは今日に備えていた装備を取り出した。装備と言ったところで、定期便が持って来られる物は限られている。開封をしなくても、中身を破損させずに調べる方法はいくらでもあるのだ。ネットでの販売で銃器を手に入れようかとも思ったが、それがジャックの元にまで届くとは思えなかった。かと言って、スネークに武器の調達を頼むわけにもいかない。そんな事をすれば、ジャックがどれほどの思いで彼を断ち切ったのか判らなくなってしまう。
 一人で戦わなければならなかった。それは、取りも直さず『彼』の望みであるとも思えた。
 今ではジャックは『彼』とかなりの確率でシンクロしている確信があった。
 ジャックが出来る範囲の調達物で武器を作っている時も、きっと『彼』も同じように刃を研いでいると思えた。襲撃に備えて浅い眠りに就く時も、『彼』も待ち遠しさに眠れぬ夜を過ごしている事がジャックには感じられた。
 ある意味では、ジャックと『彼』は鏡に映った自分自身のように似通った存在に感じられるのだ。
 ジャックにはおぼろげながら、『彼』が何者か判るような気がしていた。
 確信は無かった。だが、ジャックは『彼』の顔が見えるようだった。
 最終的な決着は、やはり自分の手でつけなければならない。それ以上に、ジャックは『彼』と戦いたかった。
 やはり、自分は殺戮の場を離れる事が出来なかった……。染着いてしまった他人の血を、洗い流す事は出来なかったのだ。
 ジャックは今週の定期便の置いて行った段ボール箱の中から、ライダースーツを取り出した。スカルスーツと比べられる物では無かったが、現状では仕方がない。スカルスーツは軍の支給品であるし、雷電では無くジャックに戻っている現在ではそれを手に入れる事は出来なかった。相手が重火器で来たらそれまでだが、ナイフならば革のライダースーツはある程度体を守る事が出来るだろう。
 銃も欲しかったが、やはりそれも難しかった。この島に獲物になる鹿でもいれば猟銃程度は手に入れられたかもしれないが、護身用に使うような小口径の銃を発注したが、それは荷物の中に無かった。刃物は銃よりも先に何度かに分けていた為に手に入れる事は出来たが、22口径さえ無いのは不安だった。
 ライダースーツを着込んだジャックは、サバイバルナイフを腰に固定した。ベルトを改造したホルダーに左右で3本のナイフ、その他に調理用のぺティナイフや食事用のナイフから研ぎ出したナイフ類を、腿と胸のポケットに分けて収納した。流石に刀身の長い刃物は届かなかった。
 心許ない装備ではあったが、ジャックは高揚を覚えていた。
 スネークとジャックの大きな違い、…彼らの能力に大きな違いを持たせているのは、攻撃性だった。スネークは文字通りにスニーキングを常として、敵との接触を極力避けるように行動する。ジャックも雷電としての記憶の中ではスネークをなぞるように行動して来たが、ジャックの本来の姿は違う。
 ジャックは獲物を狩る。
 スネークが優秀な猟犬のように任務をこなすならば、ジャックは闘犬のように相手を血まみれにしてしまう……。能力としてどちらが優れているかは、それは場合にもよるのだろうが……。
 ナイフをしまい終えたジャックは、スネークが使っていた寝室に入った。
 すぐに戻って来るかのように、スネークの部屋は彼がいた時のままだった。ベッドサイドのチェストの中に、スネークが置いて行ったバンダナがあった。
 ……気休めなのだと判ってはいたが、ジャックはそのバンダナを腕に巻いた。こんな事のお守りに使うのは、スネークにとって不本意かもしれない……、そう思うと、ジャックの口許に自嘲するような笑みが浮かんだ。
 もう、二度と会えないかもしれないが、……ジャックの心を支えてくれるのは、スネークしかいなかった。 
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