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↓乙女電です
そろそろ終盤の予定です
↓乙女電です
そろそろ終盤の予定です
ジャックは酷い吐き気を覚えた。戦いには高揚を感じていると思っていたが、ジャックにはヴァンプの思いが理解できなかった。殺戮者と言う過去ならば、ジャックとヴァンプは同じと言えたかもしれない。どちらもが望まない不幸の中で育ってきた事も、重ね合わせる事が出来たかもしれない。だが、ジャックはやはり……人を傷つけ葬るよりも、愛し愛されたかった……。ソリダスに従っていたのも、彼が自分を愛しているのかもしれないと言う幻想の上での事だった。
愛して欲しかった。軍功では無く、愛が欲しかった。
そんな事を願うのは、弱い証拠だ………、ソリダスならば、間違いなくそう切って捨てただろう。
「…スネーク……」
ジャックはスネークの乾いた暖かい手を思い出すと、胸が締め付けられるように痛んだ。初めは兄のように、父のように憧れた。伝説と呼ばれた男を目の当たりにして持った憧れは、いつか焦がれるような思いに変わって行った。
スネークに愛されたかった……。
ただ、それだけだったのだ。側にいて欲しいと思ったからこそ、ジャックはスネークを呼んだ。側にいられるだけでもいいと思っていた心が、次第に貪欲になるのが怖かった。スネークに拒絶されたらと思うと、あの胸に飛び込む事が出来なかった。
何もかもを預けて、飛び込む必要など無かったのだ。スネークの差し出した手を握れば、それで良かったはずだ。彼はジャックの心を理解する事は出来ないだろうが、寄り添う事を許してくれた筈だった。スネークにも色々な事情はあったが、自分自身の複雑な生い立ちも、兄弟と呼ぶ者との確執も越えて、スネークは常にスネークとしてそこにいた。
あの瞳のように、その懐は深かった。慈しむように見詰めてくれたスネークの瞳、愛情では無く憐憫であったとしても、ジャックはその瞳を信じるべきだったのだ。
……愛しているのかもしれない……。ジャックはずっとスネークを愛していたのかもしれなかった。子供の頃から、自分の愛情が報われた事の無かったジャックはそれを認めるのが怖かった。
ヴァンプと言う凶刃が現れて、ジャックは初めて自分の心を認めた。
「スネーク……」
一言でもいい、伝えたかった。
だが、そのスネークは自分で追い出してしまったのだ。
スネークに思いを馳せていたジャックに、突然衝撃が襲いかかった。
油断していた。ヴァンプと言えどもあれだけのダメージがあれば、しばらくは素早い移動が出来ないと思っていた。
左半身に痺れるような感覚が走って、ジャックは横倒しに草の中に倒れた。ヴァンプはいつの間にかジャックの潜んだ茂みの側まで来ていたのだ。音も無く木の枝から飛んだヴァンプは、両足でジャックの左肩を蹴った。
蹴られた衝撃だけでもジャックにダメージを与えたが、叢に倒れ込んだ時に右の鎖骨辺りに嫌な痛みが走った。
……折れた……。ジャックは左手にナイフを構えて立ち上がったが、右手は上げようとしただけで激痛を感じた。
スカルスーツならば、鎖骨が骨折したとしてもそれを補ってくれたのだろうが、ライダースーツはそこまでの機能は無かった。ジャックは出来るだけヴァンプとの距離を取ろうと背後に飛んだが、鎖骨の折れた状態ではローリングでナイフを避ける事も出来なかった。
後ずさるジャックに、ヴァンプのナイフが襲いかかった。
柳の葉のように細い銀色の光が、ジャックを掠めて浅く傷を負わせていく。一つ一つの傷に大きなダメージは無かったが、鎖骨の痛みのゆっくりとした鈍痛の間を縫うように与えられる鋭い痛みは、ジャックに大きなストレスを与えた。
たとえ、ヴァンプに殺されてしまったとしても……、ジャックはそれを恐れてはいなかった。自分の生に対して、彼はどこかで諦めてしまっていた。ソリダスの元から保護された時にも、積極的な自傷行為は無かったが、ジャックは常に自分を危険な側に置いた。無意識のうちに、自分自身を諦めてしまっていたのだ。
「くくっ……随分と可愛い顔をするんだな…」
ヴァンプがジャックの後ずさる足元に、ナイフを集中させた。
ジャックは手に構えていたナイフを、ヴァンプに向かって投げた。時間稼ぎにもならない事は判っていたが、ただ追いつめられているのは面白く無かった。
「…そろそろ…お前の血を味あわせてもらおうか」
冷たいナイフの刃を舐めたヴァンプのコートが、細かくはためいた。
「!」
辺りの草も、風に大きく揺れ始めた。まだスコールまでは時間がある。
バラバラと聞きなれたローター音と共に、辺り一面の木がなぎ倒されそうに揺れた。
風に巻き上げられたコートに視界を奪われないように、ヴァンプが林の中に駆け込んで行った。
ジャックは、……ジャックは、ただ呆然と木々の間を降りて来た縄梯子を見上げていた。
痛みで朦朧とした頭が見せる幻なのか……、ジャックが見詰める梯子の先にいる男は、手にしたライフルを上げて見せた。
「待たせたな、ジャック!」
……夢を見ているのかと思った……。
愛して欲しかった。軍功では無く、愛が欲しかった。
そんな事を願うのは、弱い証拠だ………、ソリダスならば、間違いなくそう切って捨てただろう。
「…スネーク……」
ジャックはスネークの乾いた暖かい手を思い出すと、胸が締め付けられるように痛んだ。初めは兄のように、父のように憧れた。伝説と呼ばれた男を目の当たりにして持った憧れは、いつか焦がれるような思いに変わって行った。
スネークに愛されたかった……。
ただ、それだけだったのだ。側にいて欲しいと思ったからこそ、ジャックはスネークを呼んだ。側にいられるだけでもいいと思っていた心が、次第に貪欲になるのが怖かった。スネークに拒絶されたらと思うと、あの胸に飛び込む事が出来なかった。
何もかもを預けて、飛び込む必要など無かったのだ。スネークの差し出した手を握れば、それで良かったはずだ。彼はジャックの心を理解する事は出来ないだろうが、寄り添う事を許してくれた筈だった。スネークにも色々な事情はあったが、自分自身の複雑な生い立ちも、兄弟と呼ぶ者との確執も越えて、スネークは常にスネークとしてそこにいた。
あの瞳のように、その懐は深かった。慈しむように見詰めてくれたスネークの瞳、愛情では無く憐憫であったとしても、ジャックはその瞳を信じるべきだったのだ。
……愛しているのかもしれない……。ジャックはずっとスネークを愛していたのかもしれなかった。子供の頃から、自分の愛情が報われた事の無かったジャックはそれを認めるのが怖かった。
ヴァンプと言う凶刃が現れて、ジャックは初めて自分の心を認めた。
「スネーク……」
一言でもいい、伝えたかった。
だが、そのスネークは自分で追い出してしまったのだ。
スネークに思いを馳せていたジャックに、突然衝撃が襲いかかった。
油断していた。ヴァンプと言えどもあれだけのダメージがあれば、しばらくは素早い移動が出来ないと思っていた。
左半身に痺れるような感覚が走って、ジャックは横倒しに草の中に倒れた。ヴァンプはいつの間にかジャックの潜んだ茂みの側まで来ていたのだ。音も無く木の枝から飛んだヴァンプは、両足でジャックの左肩を蹴った。
蹴られた衝撃だけでもジャックにダメージを与えたが、叢に倒れ込んだ時に右の鎖骨辺りに嫌な痛みが走った。
……折れた……。ジャックは左手にナイフを構えて立ち上がったが、右手は上げようとしただけで激痛を感じた。
スカルスーツならば、鎖骨が骨折したとしてもそれを補ってくれたのだろうが、ライダースーツはそこまでの機能は無かった。ジャックは出来るだけヴァンプとの距離を取ろうと背後に飛んだが、鎖骨の折れた状態ではローリングでナイフを避ける事も出来なかった。
後ずさるジャックに、ヴァンプのナイフが襲いかかった。
柳の葉のように細い銀色の光が、ジャックを掠めて浅く傷を負わせていく。一つ一つの傷に大きなダメージは無かったが、鎖骨の痛みのゆっくりとした鈍痛の間を縫うように与えられる鋭い痛みは、ジャックに大きなストレスを与えた。
たとえ、ヴァンプに殺されてしまったとしても……、ジャックはそれを恐れてはいなかった。自分の生に対して、彼はどこかで諦めてしまっていた。ソリダスの元から保護された時にも、積極的な自傷行為は無かったが、ジャックは常に自分を危険な側に置いた。無意識のうちに、自分自身を諦めてしまっていたのだ。
「くくっ……随分と可愛い顔をするんだな…」
ヴァンプがジャックの後ずさる足元に、ナイフを集中させた。
ジャックは手に構えていたナイフを、ヴァンプに向かって投げた。時間稼ぎにもならない事は判っていたが、ただ追いつめられているのは面白く無かった。
「…そろそろ…お前の血を味あわせてもらおうか」
冷たいナイフの刃を舐めたヴァンプのコートが、細かくはためいた。
「!」
辺りの草も、風に大きく揺れ始めた。まだスコールまでは時間がある。
バラバラと聞きなれたローター音と共に、辺り一面の木がなぎ倒されそうに揺れた。
風に巻き上げられたコートに視界を奪われないように、ヴァンプが林の中に駆け込んで行った。
ジャックは、……ジャックは、ただ呆然と木々の間を降りて来た縄梯子を見上げていた。
痛みで朦朧とした頭が見せる幻なのか……、ジャックが見詰める梯子の先にいる男は、手にしたライフルを上げて見せた。
「待たせたな、ジャック!」
……夢を見ているのかと思った……。
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