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拍手下さった方、ありがとうございますv



↓人質イベントと忍者イベントを無くしてしまったので、携帯電話と指向性マイクがありません……どうしよう

 雷電はL脚外周を通って、シェル2中央棟1階の空気清浄室に来ていた。大佐との無線を切ってからは、頭痛は治まっていた。
 KL連絡橋から中央棟に入ろうとした雷電の足が止まった。
 人の気配を感じる…。ゴルルコビッチ兵などでは無い、強い存在感を感じた。
 雷電は素早く扉を抜けて中央棟に入ると、人の気配から遠ざかって身を隠した。
 雷電の耳に、二つの足音が聞こえた。通路の端に現れたのは、若い女と白髪で眼帯の男だった。…眼帯の男、雷電はその風貌に目を奪われたが、その男は眼帯などよりも異形のアーマーの方が際立っていた。肩と胸を覆ったプロテクター、胸からマニュピレータのような物が生えている姿が、異国の神のようでもあり、…悪鬼のようでもあった。
 男の顔を見た瞬間、雷電の中で何かが弾けたような衝撃が起こった。
 ……プリスキン………。違う事は判っていたが、その男の風貌はプリスキンに酷似していた。
 雷電は呼吸が浅くなり、心拍数が上がって行くのを感じた。……プリスキンじゃない……、雷電が初めてプリスキンを見た時に感じた何かを、あの男により強く感じるのだ……。
 ……俺はあの男を知っている……。根拠は無かったが、雷電の中には確信があった。脇腹の傷で意識を失っていた時に、雷電が幻覚で見た男にも似ている。あの男が何者なのか、雷電はそれが知りたかったが……、質してみるまでも無く彼らは敵だ……。
 二人は通路の隅で何か話している様子だったが、雷電の距離では言葉は聞こえなかった。時折、眼帯の男が女を見下すように笑い、女は苛立ったような表情を浮かべるが逆らう様子は無かった。
 通路の端で隠れている雷電の方に向かって、眼帯の男が歩いて来た。雷電に気付いている様子は無く、KL連絡橋への扉を通って出て行った。
 男が去っても、若い女は通路の端に立っていた。
 全体に色素の薄い女の顔は美しかったが、その表情には厳しいものがあった。雷電は女が立ち去るのを、その場で息を殺して待っていた。
 時間にすれば何分でも無いのだが、雷電にはこの時間が何時間もに感じられた。
 女は雷電の潜んだ闇を、じっと見ていたが、ポケットからハンカチを取り出した。

 ―ジッー

 女の手を離れたハンカチが、通路の向こうの床に触れると一瞬で燃え上がり、燃え滓も残らずに消えた……。
 背中に浮かんだ汗を感じながら、雷電は女がこちらに向かってくる気配に息を殺した。
 近づいてくる足音は、雷電の方に見向きもしないで、KL連絡橋の扉を開けた。
 外の日差しが通路を照らし、その扉が閉ざされると雷電は薄暗がりに安堵を覚えた。
 しばらくその場に立っていた雷電は、そろりと壁を離れると二人が今まで立っていた通路の端に移動した。
 通路を曲がった先にドアが見える。
 …だが、その前には、ハンカチを一瞬で蒸発させた電撃床がある……。
『雷電』
 床の前で躊躇する雷電の耳に、プリスキンの声が聞こえた。
『その先に大統領はいる筈だ』
「ここは通れない」
 プリスキンがスネークなのか……、今はどこで何をしているのか…、雷電に聞きたい事はあったが、彼の最優先するべき事は大統領救出だった。プリスキンがこの先に大統領がいる事を知っているのならば、この床の対処方法も知っているかもしれない。
「床に電撃が走っている。人間も一瞬で蒸発させられそうだ」
『……近くに潜り込めそうなところはあるか?』
 プリスキンに言われ、雷電が辺りを見回すと、通路に空気口のような物が見えた。
「ある」
『そこから地下に行けるか?地下にニキータがある』
 雷電は床に這うと、空気口に入り込んだ。狭いダクトだが、なんとか進めそうだった。
「エアダクトかもしれないが、少し進んでみる」
 ダクトを這い進んで行くと、穴の先に別な部屋があるようだった。出口の近くまで行った雷電が部屋の中を覗くと、あまり広く無い部屋はガンカメラが設置されていた。その部屋からも別な部屋にダクトが出ている。位置関係で見ると、そのダクトは電撃床の向こうの部屋に繋がっているようだったが、ダクトの位置が高過ぎる……。ガンカメラをなんとかしたとしても、あの位置のダクトに上る為の踏み台になりそうな物は狭い室内には無かった。
 雷電はダクトの中を戻り、分岐が無いか探した。入って来た通路の辺りまで戻ると、ダクトは別な方向に向かっていた。
 ダクトの中で方向転換して、雷電はそちらの方に進んだ。狭いダクトの中を進むのは……、現在の雷電の状況に似ていた……。暗闇を抜けても、明るい空では無く、狭く薄暗い空間があるだけ……。雷電は溜息が洩れそうになるのを飲み込んだ。閉塞感に堪える訓練も受けている……、それは身体的な状況だけでなく、精神的にもと言う事だ。だが、今回はそれが役立っているとは思えなかった。雷電は常に理由の判らない疎外感と違和感を感じているのだ……。
 真っ暗なダクトの先に、ぼんやりと明るい所が見える。雷電がそこから外を覗き込むと、そこも小さな部屋のようだった。こちらは先ほどの部屋と違い、ダクトから見える範囲には監視カメラもガンカメラも無いようだった。
「…階段に出た」
 雷電が無線で伝えると、
『そこを降りてみろ。ニキータを探して電撃床のコントロールパネルを破壊するんだ』
「判った。やってみる」
 ……雷電は無線を切った。今ならば、プリスキンが何者なのか、オタコンとはあのオタコンなのか、何の目的でここにいるのか、聞いてみる事は出来たかも知れなかったが……、彼は敢えて聞くのをやめた。
 プリスキンが何者であろうと、自分たちは同じ船に乗っている……。雷電の孤立無援の戦いの中で、プリスキンだけが援護してくれたのだ。
 階段を下りて行く雷電に、たった一つだけ判っている事……、それはプリスキンは敵ではないと言う事だった。
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