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拍手下さった方、ありがとうございますv



↓…某様にいただいた資料を見ていて……雷電を癒すスネークを書きたくなりました。…そのうち、MGS4が無い世界のパラレルを書こうと思っています。MGS2の後、スネークに癒されて満たされる幸福な雷電の話を書きたいです。

 家に戻ったスネークは、キッチンに入って買い物を仕分けしていた。
 冷凍にする物、戸棚にしまう物、冷蔵庫に入れる物、それらを仕分けた後に、小さな紙包みが残った。
 スネークは包装紙を剥がして、白いカップを取り出すとコンロに薬缶をかけた。
 湯が沸くまでの間に、スネークは仕分けた買い物を所定の場所にしまった。
 シュンシュン、と軽やかな音を立てて湯が沸くと、スネークはコンロの火を絞ってコーヒー豆を挽いた。電動ミルでは無く、手回しの小さなミルで丁寧に豆を挽くと、お湯が丁度良くなるのだ。
 先ほど包装紙から出した白いカップと、自分用のカップをシンクに置いて、沸騰した湯を半分ほど入れる。買い出しに行ったショッピングモールにあった雑貨店で、スネークはこのカップを見つけた。前から不定期に訪れるジャックの為にカップを買おうと思っていたのだが、スネークも一か所に落ち付いているわけでは無かったし、ジャックもいつ訪れるか判らなかった為に、スネークはいつも彼が帰ってしまってからそれを思い出すのだった。買い物の途中で思い出した事もあったのだが、このカップがスネークにジャックを思い出させたのも買ってきた理由の一つだった。何の変哲もない白いカップだが、マグカップにしては薄く軽かった。白と言っても薄いアイボリーは温かさを感じさせる色だ。
 ペーパードリップでコーヒーサーバーに落とし、温めたカップにコーヒーを注ぎ分ける。それを持ってリビングに行くと、ジャックはスネークが出掛けた時と同じ姿勢でソファに寝そべっていた。
「ジャック」
 テーブルにカップを置いて声をかけると、血管が透けて見えるような瞼がピクリと震えた。
「コーヒーを淹れた。飲まないか?」
「…うん…」
 ジャックは一気に覚醒する。まるで野生のネコ科の動物のように、眠りの中から覚めて淀みなく動く。その動作も猫のようにしなやかで軽い。
「…このカップ……」
 昨晩から何度か出されたカップとは違う白いカップに、ジャックがスネークを見上げた。
「ああ、お前さんのカップだ」
 一瞬ぽかんと口を開けたジャックが、…はにかんだように微笑んだ。嬉しそうにカップを掌で包んで、しばらくジャックは黙ってコーヒーを飲んでいた。
「……ここに…戻って来ていいのか…?」
 カップの半分ほどコーヒーを飲んだジャックが、目を伏せたままスネークに尋ねた。ふらりと、それこそ野良猫のように前触れもなくジャックはスネークの元に来た。何日かスネークと一緒に過して、また、何の前触れもなく出て行く。次の約束をした事もなければ、どこに行くのかも告げた事は無かった。
 スネークはずっと、ジャックは誰かに縛られたくないのだと思っていた。自分の居場所を知らせた事が無いのも、常に自由で身軽な状態に痛いのだと思っていた。……だが、ジャックとこうして一緒に過す回数を重ねるうちに、それはジャックからスネークに対しての気遣いなのだと判った。
 ビッグシェルの時の雷電は記憶操作をされていた為に、スネークに対しても饒舌になる事があったが、本来のジャックは内向的で自分の殻に閉じこもりやすい性格だった。…おそらくはリベリアでの過去とも関係しているのだろうが、ジャックは癒されない傷を抱えたまま、その傷だけを見つめて生きているようだった……。
 本当は、…ジャックは愛されたいのだと、最近になってスネークにも判ったのだが……、こちらもやはり不器用な男だった。表面上はジャックを愛しているようにも出来たし、本心からもジャックを愛する事は出来たかもしれないが、この男の中にある頑固なサイドブレーキは引かれたままだった……。
 愛情を注ぐのならば、その相手のすべてを受け止め、…その生涯を見守らなければならない……。スネークはそんな風に思ってしまうのだ。一時の感情で愛を語る事は、彼には出来なかった。それだけの悲しい別れも知っているのだ……。
「ああ、いつでも来いよ」
 スネークは努めて明るい声で言うと、ジャックの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「……スネーク…」
 顔を上げたジャックに、スネークは片目をつぶって見せた。
「俺はお前さんの親父にはなれないが……遠い親戚のおじさんかなんかだと思って、気軽に来い」
 嬉しそうに上げられたジャックの目が、…また、伏せられた。ジャックもスネークの事を判っていた……。軽々しく愛情を口にしないスネークだから…、ジャックは信じる事が出来たのだ。ジャックの容貌に惹かれた者は、彼を掻き口説く為にさまざまな甘言を弄する、だが、それらは空虚なジャックの心をただ吹き抜ける風と同じなのだ。スネークはそんな事は言わない……、だからこそ、ジャックはこの男を信じた。
「…おじさんはこんな事はしちゃいけないんだろうが……」
 スネークがジャックの伏せた瞼にキスした。
「スネーク…」
 名前を呼んだ唇にも、スネークはキスをした。
「おいたをする悪いおじさんだが、…嫌じゃなければ、いつでも来い」
 存在を許す……、スネークの言葉は、ジャックの存在をこの場所に赦すと言っていた……。
「…うん…」
 小さく頷いたジャックの目に、僅かに残ったコーヒーを透かしてカップの底が見えた。

『love』

 小さな文字が、カップの底にあった。
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