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拍手下さった方、ありがとうございますv



↓甘えんぼオタコン

 いつもは小鳥のような小食のオタコンだったが、スネークの作ったホットサンドを残さずに食べた。その上、まだ小腹が減っているような気がすると、おかわりが欲しいと言い出した。
「珍しい事を言うな。いつも、このくらい食べてくれたらいいんだけどな」
 スネークが自分の皿を片づけながら、パンのストッカーを見ると、…こんな時に限って冷凍庫にさえパンは一切れも残っていなかった。スネークが沈み込んでから1週間は経っているのだから、食糧が底をついたとしても仕方がないのだが……。
「ええ!パン無いの?…うわぁ、無いって思うとすごくお腹が空くよ」
 オタコンもキッチンを探し回ったが、パン粉にする為に取っておくようなパンさえ無くなっていた。
「…しょうがないな……レーションでも食べようかな」
 普段は軍用レーションでも文句はないオタコンなのだが、…今日はなんとなくそう言う物を食べたくなかった。
「そう言えば…、ポップコーンを作ってくれたよな」
「床に撒いちゃったから、掃除機の中にならあるよ」
 スネークはそうじゃないと言って、キッチンの吊り戸棚の中にある乾燥コーンの瓶を取り出した。
「まだ、あるな」
 オタコンが使ったままのダッチオーブンの中に、スネークがシュガーポット一杯の砂糖をさらさらと入れた。
「何が出来るの?」
 少量の水を加えて砂糖を煮はじめたスネークの肩越しに、オタコンがダッチオーブンの中を覗き込んだ。黒いなべ底で判りにくいが、白かった砂糖は徐々に飴色に変わって来ていた。
「水を入れると撥ねるから、離れてろ」
 木べらでかき混ぜながら、スネークが言うと、砂糖の焦げる甘い香りに未練を残しながらオタコンが椅子に座った。
「何で砂糖が撥ねるの?油じゃないのに」
「何でだと思う?」
 頃合いを見てスネークがレードルに水を少し入れて、ダッチオーブンの上に構えた。その様子をわくわくしながら見ていたオタコンだったが、スネークがレードルの水を鍋に入れた瞬間に椅子から立ち上がってキッチンのドアまで後ずさってしまった。
 鍋の底でぐつぐつと泡を立てていた砂糖は、水が入ったとたんに弾けるような音を立ててもうもうと水蒸気を上げた。
「界面接触型の水蒸気爆発ならそうだって言ってよ」
 今は静かに湯気を立てるだけになったカラメルを見て、オタコンが拍子抜けしたような声を出した。スネークはくすくすと笑いながら、カラメルの中にバターを落とした。
 たっぷり入れたバターが溶け出す頃、スネークは乾燥コーンを入れて蓋を閉めた。
「もう一回、爆発を待てば出来上がりだ」
 軽くダッチオーブンを揺すってスネークが片眼を瞑った。
「いい匂いがするね」
 厚い蓋の中でコーンが爆ぜるのは心配が無いと、オタコンがスネークの背に寄り添った。
 …スネークの背に比べたら、小さく頼りないオタコンの身体だったが、…そっと寄り添って来た温もりは、スネークの胸の中も温めた。
 ぽんぽんと、ダッチオーブンの中でコーンの爆ぜる音がしている。
 何気ない日常の音…、そんな当たり前の暮らしを二人は捨てた。…スネークは生まれてから一度もそうした平凡な風景の中に身を置いた事は無かった。だからこそ、オタコンとの暮らしの中に平凡な幸せの風景を求めてもいた。朝のコーヒーの香り、トーストやチーズの香ばしい匂い、湯気の立つ鍋、そんな細々した事が大切に思えた。
 ダッチオーブンを火から下ろし、スネークはキャラメル色のポップコーンをボールに空けた。
「うわぁ…美味しそうだね」
 眼鏡を湯気で曇らせて、オタコンがスネークに笑顔を向けた。
「旨いな。…だが、旨い物はカロリーも高い」
 ボールの中のポップコーンに伸ばしたオタコンの手が止まった。上目使いにスネークを見る目が悪戯っぽく細められている。
「ダイエットは、スネークが手伝ってくれるんだよね?」
 以前、セックスをダイエットコントロールの運動のように言ったスネークの事を、オタコンはまだ根に持っているらしい。
「ダイエットか…」
 スネークが不精髭の浮いた顎を撫でながら、にやりと口の端を上げた。
「ダイエットの手伝いは出来ないが……、俺が楽しい事なら出来るな」
 そう言ってスネークがオタコンの腰に腕を回して引き寄せると、オタコンがスネークの頬に額を擦りつけた。
「ふふふ…それは、僕も楽しい事だよね?」
「そうだな…。そういや、お前さんが嫌がってるのは見た事無いな」
 甘いキャラメルの香よりも甘く…、スネークがオタコンに口づけた。
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