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拍手下さった方、ありがとうございますv
↓クリスマスっぽい話をと思って書いていたのですが……スネ雷を書くと、どうしても暗い感じに…………Snake kitchenで明るいのを書こうかと画策中です
↓クリスマスっぽい話をと思って書いていたのですが……スネ雷を書くと、どうしても暗い感じに…………Snake kitchenで明るいのを書こうかと画策中です
夕食の後で、スネークが小さなブッシュ・ド・ノエルをテーブルの上に出した。意外にもジャックが菓子を好む事を知ってから、スネークはジャックが訪れた時にはケーキなどを作るようにしていた。無表情に食事をする彼が、クリームのたっぷりとのったケーキやタルトを見た時にだけは、柔らかい笑みが浮かぶのを見たかったからかも知れない。
スネークにも言える事だったが、ジャックにとっての食事は楽しむ物と言うよりは、必要なカロリーを摂取する意味合いが濃かった。…以前、ジャックはローズと食事に行く際に、…チェーン店のピザ屋を指定して、ローズに嫌な顔をされたくらい食べ物に関して頓着しなかった。デートを重ねるうちに、ローズが感じのいいレストランやバーに連れて行く事があったが、ジャックは不思議な事にそう言った場所の記憶がまるでなかった。こんな店に来たのは初めてだとジャックが言うと、彼女は少し悪戯っぽい瞳で、…誰にでもそんな口説き文句を使うのかと笑った。……ジャックは本当にそうした場所の記憶が無かったのだ。……その頃はジャックの記憶は封じられていて、VR訓練で上書きされた記憶の中に、恋人とデートは無かった。
記憶があったとしても、ジャックにはそんな甘い思い出は無かった。……無理矢理に強いられた行為は……、恋愛とは言い難かった。
少女達は言わずもがな、少年でも彼のように美しい姿態を持った者には……、殺しの技の他にも、訓練が施された。それは訓練に名を借りた虐待でしか無かった……、本来の訓練で優れた『技能』を示す者はには必要のない事だったのだが、ジャックのように美しい少年に固執する者は多く、彼がどれほど優秀に課題をこなしても、補習と称して呼び出される事が多かった。
ケーキは…彼らの事を思い出させた。
ローズと訪れたレストランで、デザートに出された小さなケーキで吐いてしまった時に、…ジャックは言い知れない不安を覚えた。それからは、甘い物が嫌いなのだと思っていたが、記憶が戻ってみると、苛烈な少年時代の中にケーキだけはほっとできる思い出としてあった。
嫌な事を済ませれば…、ケーキが待っている。
ケーキと直結した嫌な事を、ジャックは自分の中で消化する事が出来たのだ。…それがジャックの人生をどう変えたか…、今では判っている。だが、一時として平穏な時間を得る事が出来ないような、そんな人生を与えた神を恨むより、それが自分の生であるならば甘んじてそれを受け入れようと思った。
ジャックの前にはスネークがいた。
生まれおちる前から、スネークはソリッドスネークとなる事を運命として持っていた。……伝説の傭兵としての過酷な任務も、同じ血を持つ者との確執も、……全てをスネークは受け入れていた。
誰もが自分の思い通りの人生などは歩めない。それは判っているのだが、…ジャックは自分の生い立ちを忌わしい過去としか思えなかった。だが、これが自分自身なのだ。そう受け入れる事が出来たのは、スネークがいた為だった。
誰もが与えられた生涯を生きている。それを否定し続けるか…、受け入れて精一杯に生きるかは本人次第なのだ。
スネークは…諦めているとは思えなかった。抗うでも無く、だからと言って流される訳でも無く、スネークは受け入れて来たのだ。自分の人生を呪って、諦めて生きる事は簡単な事かも知れない……。だが、スネークはその与えられた生の中で、『自分らしく』生きている。
「スネーク……」
じっと、ブッシュ・ド・ノエルを見ていたジャックが、スネークの顔を見上げた。チョコレートクリームと同じくらいに、とろりと溶けた笑みがそこにあった。
現在のジャックにとって、甘いお菓子の香はスネークに直結している。
スネークの心遣いは、甘い香りになってジャックを包み込む。
それは…スネークの心遣いなのだ。
ジャックの瞳に淡く宿る恋の色は、スネークの中には無い。ジャックがどれほど熱情を込めてスネークを見ても、…彼は労わる眼差しを変えなかった。
「スネーク」
腕を伸ばすと、…スネークがジャックの肩を引き寄せた。
……この男は、…自分を愛してはくれない……。ジャックにもそれは判っていた。それは、幼い日にソリダスに覚えた感情にも似ていた。飲み込みが早く、大人ですら困難な事を成し遂げるジャックに、ソリダスは目をかけてくれた。……ソリダスの行為は…愛情の発露なのだと……、ジャックはそれを信じたかった。嫌な事でも、一生懸命にこなして行けば……愛して貰える。彼にとって、それは命綱のような思いだった。
スネークの胸に身を預け、ジャックは切り分けたブッシュ・ド・ノエルの皿を手に取った。
バターと卵と、甘いチョコレートの香り。
子供には当たり前に与えられる筈の愛情とは、このような香りなのでは無いだろうか……。
ジャックは知る筈も無い温かな家庭を、脳裏に思い描いてみた…。
「ジャック…?」
皿を置いてスネークの胸に縋りついたジャックに、スネークはやはり労わるような声を掛けた。
「…ううん……」
ジャックは自分が暖かな家庭を想像する事も出来なかった事に打ちのめされていた。今までに見た事のある映画や、誰かからの話……、それらを繋ぎ合せて理想の家庭を思い描いてみようとしても……、ジャックの頭には何も浮かんでこなかった。
「チョコレートクリームは苦手か?」
スネークは知っているのだろうか……、ジャックの行き場の無い想いを……。テーブルの上からモスレムを取り上げて、彼はジャックの肩をより一層強く抱いただけだった。
「…スネーク……一人にしないで……」
紫煙に紛れたジャックの声は子供のように頼りなかった。
「ああ。一人にしない…」
伝説の傭兵の声は……、優しい嘘の響きがあった。
……この男は、俺を愛してはくれない………。
それでも良かった。
自分の中にある恋が、ジャックを一人では無くしていた。
誰も彼もが敵だと思うしか無かった日々に比べれば、…今は愛する人がいる……。それだけで、ジャックは以前の彼ではなった。奪われるばかりの子供では無い。自分自身の事をそう思う事が出来た。
腕の中で顔を上げたジャックの、瞼が濡れているようにスネークには見えた。白い天使の彫像のように美しい頬に掌を添えると、ジャックはキスを強請るように目を閉じた。
優しく嘘を吐く男の唇は、……ジャックの中の恋を知っているのかも知れない。
スネークにも言える事だったが、ジャックにとっての食事は楽しむ物と言うよりは、必要なカロリーを摂取する意味合いが濃かった。…以前、ジャックはローズと食事に行く際に、…チェーン店のピザ屋を指定して、ローズに嫌な顔をされたくらい食べ物に関して頓着しなかった。デートを重ねるうちに、ローズが感じのいいレストランやバーに連れて行く事があったが、ジャックは不思議な事にそう言った場所の記憶がまるでなかった。こんな店に来たのは初めてだとジャックが言うと、彼女は少し悪戯っぽい瞳で、…誰にでもそんな口説き文句を使うのかと笑った。……ジャックは本当にそうした場所の記憶が無かったのだ。……その頃はジャックの記憶は封じられていて、VR訓練で上書きされた記憶の中に、恋人とデートは無かった。
記憶があったとしても、ジャックにはそんな甘い思い出は無かった。……無理矢理に強いられた行為は……、恋愛とは言い難かった。
少女達は言わずもがな、少年でも彼のように美しい姿態を持った者には……、殺しの技の他にも、訓練が施された。それは訓練に名を借りた虐待でしか無かった……、本来の訓練で優れた『技能』を示す者はには必要のない事だったのだが、ジャックのように美しい少年に固執する者は多く、彼がどれほど優秀に課題をこなしても、補習と称して呼び出される事が多かった。
ケーキは…彼らの事を思い出させた。
ローズと訪れたレストランで、デザートに出された小さなケーキで吐いてしまった時に、…ジャックは言い知れない不安を覚えた。それからは、甘い物が嫌いなのだと思っていたが、記憶が戻ってみると、苛烈な少年時代の中にケーキだけはほっとできる思い出としてあった。
嫌な事を済ませれば…、ケーキが待っている。
ケーキと直結した嫌な事を、ジャックは自分の中で消化する事が出来たのだ。…それがジャックの人生をどう変えたか…、今では判っている。だが、一時として平穏な時間を得る事が出来ないような、そんな人生を与えた神を恨むより、それが自分の生であるならば甘んじてそれを受け入れようと思った。
ジャックの前にはスネークがいた。
生まれおちる前から、スネークはソリッドスネークとなる事を運命として持っていた。……伝説の傭兵としての過酷な任務も、同じ血を持つ者との確執も、……全てをスネークは受け入れていた。
誰もが自分の思い通りの人生などは歩めない。それは判っているのだが、…ジャックは自分の生い立ちを忌わしい過去としか思えなかった。だが、これが自分自身なのだ。そう受け入れる事が出来たのは、スネークがいた為だった。
誰もが与えられた生涯を生きている。それを否定し続けるか…、受け入れて精一杯に生きるかは本人次第なのだ。
スネークは…諦めているとは思えなかった。抗うでも無く、だからと言って流される訳でも無く、スネークは受け入れて来たのだ。自分の人生を呪って、諦めて生きる事は簡単な事かも知れない……。だが、スネークはその与えられた生の中で、『自分らしく』生きている。
「スネーク……」
じっと、ブッシュ・ド・ノエルを見ていたジャックが、スネークの顔を見上げた。チョコレートクリームと同じくらいに、とろりと溶けた笑みがそこにあった。
現在のジャックにとって、甘いお菓子の香はスネークに直結している。
スネークの心遣いは、甘い香りになってジャックを包み込む。
それは…スネークの心遣いなのだ。
ジャックの瞳に淡く宿る恋の色は、スネークの中には無い。ジャックがどれほど熱情を込めてスネークを見ても、…彼は労わる眼差しを変えなかった。
「スネーク」
腕を伸ばすと、…スネークがジャックの肩を引き寄せた。
……この男は、…自分を愛してはくれない……。ジャックにもそれは判っていた。それは、幼い日にソリダスに覚えた感情にも似ていた。飲み込みが早く、大人ですら困難な事を成し遂げるジャックに、ソリダスは目をかけてくれた。……ソリダスの行為は…愛情の発露なのだと……、ジャックはそれを信じたかった。嫌な事でも、一生懸命にこなして行けば……愛して貰える。彼にとって、それは命綱のような思いだった。
スネークの胸に身を預け、ジャックは切り分けたブッシュ・ド・ノエルの皿を手に取った。
バターと卵と、甘いチョコレートの香り。
子供には当たり前に与えられる筈の愛情とは、このような香りなのでは無いだろうか……。
ジャックは知る筈も無い温かな家庭を、脳裏に思い描いてみた…。
「ジャック…?」
皿を置いてスネークの胸に縋りついたジャックに、スネークはやはり労わるような声を掛けた。
「…ううん……」
ジャックは自分が暖かな家庭を想像する事も出来なかった事に打ちのめされていた。今までに見た事のある映画や、誰かからの話……、それらを繋ぎ合せて理想の家庭を思い描いてみようとしても……、ジャックの頭には何も浮かんでこなかった。
「チョコレートクリームは苦手か?」
スネークは知っているのだろうか……、ジャックの行き場の無い想いを……。テーブルの上からモスレムを取り上げて、彼はジャックの肩をより一層強く抱いただけだった。
「…スネーク……一人にしないで……」
紫煙に紛れたジャックの声は子供のように頼りなかった。
「ああ。一人にしない…」
伝説の傭兵の声は……、優しい嘘の響きがあった。
……この男は、俺を愛してはくれない………。
それでも良かった。
自分の中にある恋が、ジャックを一人では無くしていた。
誰も彼もが敵だと思うしか無かった日々に比べれば、…今は愛する人がいる……。それだけで、ジャックは以前の彼ではなった。奪われるばかりの子供では無い。自分自身の事をそう思う事が出来た。
腕の中で顔を上げたジャックの、瞼が濡れているようにスネークには見えた。白い天使の彫像のように美しい頬に掌を添えると、ジャックはキスを強請るように目を閉じた。
優しく嘘を吐く男の唇は、……ジャックの中の恋を知っているのかも知れない。
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