JAI BAISE TA BOVCHE IOKANAAN JAI BAISE TA BOVCHE 2

拍手下さった方、ありがとうございますｖ



↓まだエロが挿めません……←

　ナノマシンを経由しての体内送信の為、プリスキンに聞かれる事は無いと判っているが、雷電は少し彼から距離を取って大佐のコールに応えた。
　『どうした？雷電』
　『シール１０のアルファチームが全滅……いや、一人は無事だ』
　左に僅かに首を傾げ、耳元に神経を集中するように指をあてた雷電の横顔を、プリスキンは黙って見ていた。
　……ナノマシンによる体内通信か……。
　白磁で出来たような横顔だと思った。滑らかな皮膚の張りはまだ２０代に入ったばかりだろうか…。高く通った鼻梁の為に幼さは感じないが、体の線の露わになるスニーキングスーツを着てさえ、彼は男とも女とも見えなかった。
　……スニーキングミッションに、こんな目立つ顔は厄介だろう…。教会にある天使の像が、彼に最も似ている物に思えたプリスキンは苦笑を洩らした。今回のようにスカルマスクで顔を隠しておける場合ならば、彼の美貌も人目を惹きつけはしないだろうが、反乱軍へ潜入などと言った任務に雷電の顔は邪魔になる。まだ実験段階を出たばかりのVR訓練を受けさせてまで、実戦配備を考えたい人物だろうか…？プリスキンの疑問はそちらにもあった。雷電の様子は如何にもな新兵で、プリスキンに警戒している事さえがありありと判ってしまうような状態だ。何か…、漠然とではあるが、プリスキンも雷電に違和感を覚えていた。
　プリスキンはまだ通信中の雷電を残して、南西に置かれたノードに向かった。この場所は、ヴァンプにマーキングされているのも同然だ。血臭を除いても、ここにいる事は避けたかった。それにヴァンプの通信の様子では誰かに呼び出されたようだ、ここに危険が訪れる知らせなのかも知れない。
　ドアを開けて階段に出ると、通信を終えた雷電も後を追ってきた。
　……ヒヨコだな……。一人でのスニーキングミッションは慣れていても極度の緊張を強いられる。ましてVR訓練のみで実践の経験が無ければ、味方を見つければ行動を共にしたくもなるだろう。…そして、あの悪魔のような男。ヴァンプの現れた場所は、外気温さえ下がるような恐怖に晒される。
「…どうした？」
　階段の前で立ち止まったプリスキンの背に、雷電が尋ねた。
「見てみろ」
　階段の手摺に凭れかかって絶命している男は、海軍大佐らしかった。サングラスに覆われた眼は見えないが、出血から見ても息は無いようだった。その男の白いシャツの右手…、手錠が途中で千切れている。鎖の部分が切り取られ、片方の輪しか無い手錠の意味するところは、重要な物を運んでいたと言う事だ。
　……核発射装置を持ち去られたか……。プリスキンが唇を噛み締めるのを、雷電は不思議そうに見ていた。
　海軍大佐は核発射の為のコードを解除するブラックケースを持っていた。…そして、今、それはここには無い。
「なんだ？」
　プリスキンの様子に雷電が声をかけると、プリスキンは小さく首を振った。
「…海軍大佐……」
　雷電の姿には、嘗ての自分の姿が垣間見えた。信じる国家のあった自分…、何もかもが大掛かりな演習か何かのように、人さえも駒の一つとして動かす者達に操られた自分自身……。
「…む……」
　急にプリスキンの状態が傾いで、慌てて雷電が支えた。
「大丈夫か」
　支えた雷電の腕を押し戻し、プリスキンが階段に腰を下ろした。
「少し休ませてくれ。出血が思ったより酷かったようだ…」
　そう言いながらも、プリスキンはポケットを探って煙草を取り出した。火を点けようとライターを探したが、ライターが見つからないようだ。
「…さっきの男……あれは何だ？」
「あの吸血鬼か？……あれはヴァンプ……」
　ヴァンプの名と同時に、二人の脳裏に巨大な蝙蝠のようなヴァンプの姿が蘇った。細面の整った顔立ち、爬虫類のように長い舌、氷の息遣いが耳元に迫ったような気がして、雷電の背が震えた。
「ルーマニア生まれのナイフ使いだ」
「…人間には思えなかった…」
　独り言のような雷電の声には、僅かに恐怖が滲んでいた。
「流石に、VR訓練のプログラムにはなかったろう」
　煙草に火を点けるのは諦めたのか、プリスキンが雷電を見上げた。
「デッドセルの一人だ」
「…デッドセル…あいつが…」
　もう、雷電にはプリスキンを計る余裕は無かった。この男の知る情報が、SEALにしては不自然である事も、今は考える事が出来なかった。
　…ヴァンプは、人の温かい生血を啜る吸血鬼だった。ヴァンプの現れたところには、冷たい恐怖しか残らなかった。