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拍手下さった方、ありがとうございますv



↓まだまだじれったい感じです

 昼食の準備をしながら、スネークは無意識に胸ポケットに触れた。…そこには昨日オタコンがクウェリの墓に供えた、折り紙の花が一つだけ入っていた。熱心な様子で何を作っているのかと思っていたが、オタコンがクウェリの事を考えてくれていたのが嬉しかった。ウルフとハイパーセント達との絆とはまた違っていたが、スネークにとっても橇犬たちは家族同然だった。シャドーモセスでの出来事から、オタコンが犬たちを避けているのは、スネークも気づいていた。それでも、オタコンを迎え入れたクウェリの事を思っていてくれた事が嬉しかったのだ。
 そして、スネークの胸には小さな白い花と一緒に、オタコンの涙が染みていた。思わず抱きしめてしまった肩は小さく、頼りない肩を震わせて泣くオタコンはスネークの庇護欲を激しく刺激した。
 愛おしいと思った……。
 腕の中にすっぽりと収まってしまった細い体も、おずおずとした仕草でスネークのシャツに縋った指も……、何もかもが愛おしかった。つり橋でも構わなかった…。たとえ、この恋のきっかけが錯覚だとしても、実際にスネークはオタコンを愛しいと思っているのだ。
 昨夜はあまりよく眠れなかった。本当に、自分はまるでティーンエイジャーに戻ってしまったのではないか、そう思えるほど……、昨夜はオタコンの感触を思い出して眠れなかった。
「いい匂いだね。何が出来るの?」
 スネークが缶詰のアサリを使ってクラムチャウダーを作っていると、匂いに誘われたようにオタコンがキッチンに入ってきた。
「クラムチャウダーだ。冷凍庫からパンを出してくれないか?」
 鍋を覗きたそうにしているオタコンと顔を合わせるのが、スネークには何となく照れ臭かった。オタコンは昨日の事を気にしている様子もない、自分ばかりが意識しているようで、スネークはバツが悪かった。
 スネークに言われて、出したライブレッドをオーブンに入れながら、オタコンはスネークの背を見ていた。
 …泣くようなつもりはなかった。ただ、クウェリが自分を群れに迎えてくれたのだと思うと、オタコンの胸は締め付けられるように苦しくなって、涙を止める事が出来なかったのだ。それを受け止めてくれたスネークの腕は温かかった。オタコンの知らない温もりだった。他人に体を預けて安心したのは……、幼い頃に抱かれた母の腕くらいしか記憶に無かった。それさえも、新しい母との関係に上書きされたように薄れていたのだ。オタコンは母を思い出す時にも、罪悪感を覚えていた。父を死に追いつめてしまったかもしれない負い目、オタコンはそれをずっと抱えて生きてきたのだ。スネークの胸は、オタコンに何の罪悪感も抱かせなった……。ただ、暖かく受け止めてくれただけだった。
 オーブンの様子を見るオタコンの頬が、ほんのりと赤くなった。スネークの腕は、オタコンに安心だけをくれたわけではなかった。今でもスネークの腕が抱いた肩が熱いのだ。
 ……僕は……どうしちゃったんだろう………。
 今まで、どんな男にも欲情した事など無かった。好みの女性を見れば、オタコンも男である、興味を覚える事はあった。肉体的な繋がりを強く求める気持ちは、オタコンが無意識に封印していたものだが……、それでも、女性に対して欲情を覚える事はあった。人並み…そういうには異質な関係だったかもしれないが、オタコンも女性を知らないわけではない。人肌が恋しくないわけではない……、だが、オタコンがスネークに感じるのはそんな曖昧な感情では無いのだ。スネークは男の目にも惚れ惚れとするような男だが、オタコンはそれに憧れているわけでもない。
 ……スネークの腕に抱かれたら……僕はどうなるんだろう………。あり得ない事だと、オタコンは少なくともそんな事があるとは思っていないのだが……、だからこそ、オタコンは恐れながら、スネークの腕を思い描く。
「もう、よさそうだな」
 ぼんやりとオーブンの中を見ていたオタコンの後ろから腕が伸びてきて、温まったライブレッドをスネークが取り出した。
 自分の顔のすぐ横に伸ばされたスネークの腕、二の腕の盛り上がった筋肉にオタコンの目はくぎ付けになった。この腕に抱きしめられた……、オタコンは頬が熱くなるのを感じた。
 こんな気持ちは、絶対にスネークに気づかれてはいけない……。そう思うのだが、こればかりは自分でもどうする事も出来ないのだ。
 キッチンのテーブルに向かい合うと、どちらもが皿に集中するような顔をして、目を合わせる事が出来なかった。
「そろそろ、パンが終わるな……午後は買い出しに行って来るか…」
 スネークの言葉に、オタコンの肩がぴくりと跳ねた。
「…パンの他にも何か買うの?」
「雑誌を少し見てくるかな」
「ふぅん……」
 オタコンはスネーク一人で出掛けさせない口実が無いか考えていたが、…何も思いつかなかった。チョコレートバーは少くなっていたが、チョコレートバーをいつも買うドラッグストアは、あの赤毛の女性のいるカフェの隣なのだ…。
「何か必要なら買ってくるぞ」
 一緒に行こうと言うかとも思っていたが、スネークは一人で行こうと決めているようだった。
「…ううん、大丈夫」
 ドラッグストアに用事を頼まなくても、スネークはあのカフェに行くかもしれない……。だが、行かないで欲しいとはオタコンには言えなかった。
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