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拍手下さった方、ありがとうございますv


↓……性欲を持て余すを思い出してしまいました……

 スネークは階下に降りると、キッチンのキャビネットの引き出しを探した。確か、まだ何錠かジアゼパムはあった筈だった。小さな工具や、何かの部品を掻き分けて、小さな錠剤を探していたスネークの手が止まった。
 不意にオタコンの唇の感触を思い出したのだ。
 シャドーモセスで出会った時は、厄介な物を拾ってしまったと思っていた。頭でっかちの子供……スネークにはオタコンはそんな風に見えたのだ。自分のテリトリーの中でしか生きられないひ弱な子供、足手纏いだとばかり思っていたオタコンだったが、スネークの目的を知ると彼は自分の危険も顧みずにスネークに協力してくれたのだ。もしも、シャドーモセスで別れていたら、スネークにとってオタコンはただの風変りな青年だったのだが……。
 何故、自分はオタコンを連れて来たのだろう……。スネークは彼を連れて来た事を後悔していた。自分の周りには常に争いしか無かった。戦場でしか生きる事の出来ないスネークにとって、常に共にいるような人間は持つべきでは無いと判っていた。伴侶を求めたり、家族を求めれば、自分にとっても相手にとっても不幸になる……。スネークは漠然とそう思って来たのだ。
 目当ての錠剤を見つけて、スネークはキッチンのテーブルに腰かけた。
 ……オタコンはどう考えても、戦場に馴染めるタイプだとは思えなかった。それを、NPOを立ち上げるパートナーに選んだのは、彼がそれを望んだからに他ならないのだが………。果してそれだけなのだろうか……。オタコンと離れ難く思っていたのは、自分の方なのでは無いか……。
 自問したスネークの頬に、自嘲するような笑みが浮かんだ。
 どんないい訳を考えても……、スネークはオタコンを放っておけなかった事に変わりはないのだ。今までの自分の人生を振り返ってみて、決して人と共にいる事が出来るとは思えなかった。いつ今回のように要請を受けるかも知れない…。それだけでは無しに、フィランソロピー事態の活動が始まれば、自ずとスネークは自分の身を危険にさらす事になるのだ。銃後の者の安全を常に守る事が出来るか………、そう問われれば否と言うほかない。
 それなのに…、自分の業は知っているはずだったのに、スネークはオタコンを解放してやらなかった。自分も大量破壊兵器に関与してしまった罪悪感に苛まれるオタコンに、スネークは他の道も示す事が出来た。何も危険なNPOに関わらせなくても、オタコンに贖罪の場はあった筈だった。
 ……スネークはオタコンと別れたくなかったのだ。どこかで、オタコンが男である為に、自分が持つのは恋愛感情ではなく、仲間意識なのだと思い込もうとしていた。同じように憂う物を持つ仲間としてなら、スネークはオタコンを側においてもいいのかも知れないと思っていたのだ。
 スネーク自身も、自分の心を見ないようにしてきた。生活全般に疎く、何事にも不慣れな様子のオタコンを、自分が保護しているように思おうとしていた。
 違うのだ……。
 スネークは、何かを思い切るように、手の甲で唇を拭った。ごしごしと唇を拭っても、小刻みに震えたオタコンの唇の感触は去らなかった。腕の中に抱いた身体は、ほっそりとしていたが、女性とは全く違った骨ばった感触だった。スネーク自身は自分の事はヘテロセクシャルだと思っていた。女性との接触の少ない場所に身を置いても、同性に惹かれた事は無かった。性欲の処理としての行為は、経験がないわけではないが、そこにはスポーツのような意識しか無かった。腕の中に震えたオタコンの肩を抱いた時のように……、守ってやりたいとも、優しくしてやりたいとも思わなかった。相手が自分にどのような感情を持っていようとも、その場限りの処理行為でしか無かったのだ。
 今、スネークがオタコンに感じるのは、性欲では無い。心だけが欲しいなどと綺麗事を言うつもりはないが、スネークはオタコンに愛情を感じていた。
 オタコンの何が……、それはスネークにも判らなかった。以前、オタコンにウルフとの関係はストックホルム症候群だと言った事があった。それでいけば、自分がオタコンに感じる感情は、吊り橋り理論の上の事だとも解釈できる。共に危機を乗り越えた高揚が、恋を錯覚させるのだと……、自分自身もそれで納得させようと思っていたのだが、スネークにはそれでは釈然としない思いがあった。
 何気なく微笑むオタコンの瞳が、几帳面に切りそろえた後の爪を噛んでいる仕草が、スネークには可愛らしくて仕方がなかったのだ。
 ……知られてはいけない思いだと言う事は判っていた。
 オタコンは完全なヘテロセクシャルで、男との性交渉の経験も無い筈だった。スネークは下手をしたらオタコンは女も知らないのでは無いかと思っていた。自分がどんな目でオタコンを見ているか知れば、きっと脅えてしまうに違いない……。スネークはそんな風に自分を戒めていた。
 昨日の買い出しにしてもそうだった。一人でいた時には、買いだめの効く物だけで、買い物も最小限で済ませて来たが、二人きりでここにいる事が、スネークにも辛い時がある。オタコンへの欲求を、他の人肌で紛らわせる……。そんな事をしたところで、スネークがオタコンに持ってしまった気持に変わりはないのだが、そうでもしないと我慢が出来ない事もあるのだ。
 スネークは自分自身でも知らなかった自分に驚かされた。他人への依存は低い方だと思っていたスネークだったが、それは執着を持つ相手に出会わなかったというだけなのだ。
 スネークはポケットを探って、モスレムを取り出した。皺の寄ったパックから1本取り出そうとしたが、そのパックは空になっていた。
 新しく煙草を出して来る気にもなれず、スネークは冷蔵庫を開けてミネラルウォーターのボトルを取り出した。
 ……納屋でも直すか……。
 オタコンに薬を渡したら、長い事放り出してあった納屋の屋根を直そうと思った。
 側にいたい……。オタコンの側にいたかったが、…近ければ近いほど辛い事もあるのだ。
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