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拍手下さった方、ありがとうございますv
↓オタコンはグダグダするのが好きだといい……
↓オタコンはグダグダするのが好きだといい……
オタコンは暖炉の前に腹ばいになったまま、スネークが置いて行った雑誌のクロスワードを解いていた。暖炉の中の薪は少なくなり、くべ足さなければならないのだが、オタコンは近くのカウチに置かれていたブランケットを引き寄せただけだった。
夜になったが、スネークは帰って来なかった。
フェアバンクスまでの時間を差しい引いたとしても、夜まではかかり過ぎだと思うが、オタコンは一人でいる事は苦痛では無かった。
スネークがいれば、食事を取れとか、ベッドに行って眠れとか、ハイティーンになってからは聞いた事もないような小言を言われる事の多いオタコンだったが、一人でいれば、食事の代わりにチョコレートバーを食べていようが、2日もパジャマのままで暖炉の前にいようが何も言われなくて済むのだ。
流石に喉が乾けばキッチンに行くが、オタコンは部屋の中に薪を積んでおいて、一歩も外には出ていなかった。
……買い出しに行くスネークに、餌は与えてあるが時々犬を見て欲しいとは言われていたが、オタコンは窓から犬達を見る事もしていなかった。
犬を見るのが辛い……。スネークの犬達は皆人懐っこく、オタコンがここに来た時には押し倒されての大歓迎に始まって、最後には足にマーキングまでされてしまった。けして犬が恐いわけでは無い。ただ、犬の眼差しを見るのが怖いのだ。特に、橇犬としての訓練をされ、人の為に使役する事に慣れたスネークの犬達を、オタコンは見ている事さえ辛かった。
シャドーモセスにいたのは、ハイパーセントのウルフドッグだった。ここにいる犬達とは、一線を隔した存在である事は判っている。だが、姿形はハイパーセントもシベリアンハスキーもアラスカンマラミュートも、オタコンの目には同じように大きな犬に見えるのだ。
午後の昼寝からも、オタコンは犬達の声に起こされた。いつにも増して騒がしいい犬達の声に、オタコンも様子を見に行こうかと思ったが、吹雪とまではいかなくても降り出した雪に止めてしまっていた。
今は暗闇の中に犬の声がしている。
オタコンは雑誌を置いてブランケットに包まった。今日、スネークが帰って来なければ、このまま眠ってしまえる……。
自堕落に暮らす事を目的にしている訳では無かった。だが、オタコンは深い脱力感に苛まれていた。NPOを立ち上げてはいたが、実質的な活動が出来るような資金を融通してくれるスポンサーも見つからず、仕事は定期的にペンタゴンにハッキングする事くらい……、オタコンは自責の念から立ち上げたNPOではあったが、自浄作用はまだ発揮されていなかった。
うとうととしかけた時に、スノーモービルの音が聞こえた。流石にスネークでもここで寝ている自分を動かす事は無いだろう……、オタコンは目を閉じた。
スネークは納屋にスノーモービルをしまうと、荷物を下ろした。クラーボックスに入れた肉や魚、紙袋一杯の野菜類、オタコンに頼まれていたチョコレートバー、それらを担いで家に入ろうとしたスネークは犬達の鳴き声に足を止めた。
外出から帰ってくる自分を、犬達は確かに待っている事が多かったが……、今日の鳴き声は少しそれとは違っているようだ。
犬達に近づいたスネークの顔が険しくなった。
鳴いている犬達の真ん中に、横たわったままの犬が一頭いる……。
「クウェリ……」
梢に積もる雪のように真っ白な雌のハスキー犬だった。もう、橇を引く事は無かったが、ここの犬の中にも彼女の子供は何頭かいた。高齢だった為に、スネークも心配していたのだが、……眠るような穏やかな顔は、スネークを見ても嬉しそうに鼻を鳴らす事は無かった。背中の薄いグレーの毛を撫でると、何時間か前には苦しみから解き放たれていた事が判る……。
スネークがクウェリの体を抱き上げると、他の犬達はスネークの足元で遠吠えを上げた。
「大丈夫だ、…遠くに言ったわけじゃない。彼女はみんなの側にいるだろ?」
スネークの声に、犬達は一層悲愴な声を上げた。
冷たくなったクウェリを抱いて、スネークは庭の樅の木の下に行った。
「お前達の家の側に眠って貰おう…」
スネークが雪の上にクウェリを横たえると、犬達は遠巻きに見守るようにしながら、長く尾を引く声を上げた。
暖炉の前で丸くなっていたオタコンも、中々家に入って来ないスネークや、一層大きくなった犬達の声が気にかかった。
……何かあったのだろうか…?……。オタコンが立ち上がって窓辺に行くと、スコップで樅の木の下を掘り返すスネークの背と、……雪の上に横たわる白い犬が見えた。
「…え……だって……」
確かにスネークに犬の様子を見て欲しいと言われたが…、具合が悪い犬がいるとは言われなかった。死んでしまうような犬がいるなら、オタコンだってちょっとは犬の様子を見に行ったはずだ。
「だって…何も…」
オタコンは窓枠を握った自分の手が震えている事に気付いて、その手を胸の前で握り締めた。
遠吠えをする犬達の声は、オタコンの耳にシャドーモセスで聞き慣れた声を思い出させた。
……ウルフ……。
真っ白な雪の上に……、横たわっているのは彼女では無いのに……。オタコンはがたがたと震える膝で窓を離れた。
……悪い事が起こったよ………。
自分の周りに起こる不幸は、何かしら自分が引き起こしてしまったような気がする……。オタコンはブランケットを被ったままリビングを出て階段を上がった。
震える膝のせいで何度も階段から落ちそうになったが、…スネークが家に入って来た時に、どんな顔をして何を言ったらいいのか判らない。転げこむように自分の部屋に戻ると、オタコンはベッドの中に逃げ込んだ。
夜になったが、スネークは帰って来なかった。
フェアバンクスまでの時間を差しい引いたとしても、夜まではかかり過ぎだと思うが、オタコンは一人でいる事は苦痛では無かった。
スネークがいれば、食事を取れとか、ベッドに行って眠れとか、ハイティーンになってからは聞いた事もないような小言を言われる事の多いオタコンだったが、一人でいれば、食事の代わりにチョコレートバーを食べていようが、2日もパジャマのままで暖炉の前にいようが何も言われなくて済むのだ。
流石に喉が乾けばキッチンに行くが、オタコンは部屋の中に薪を積んでおいて、一歩も外には出ていなかった。
……買い出しに行くスネークに、餌は与えてあるが時々犬を見て欲しいとは言われていたが、オタコンは窓から犬達を見る事もしていなかった。
犬を見るのが辛い……。スネークの犬達は皆人懐っこく、オタコンがここに来た時には押し倒されての大歓迎に始まって、最後には足にマーキングまでされてしまった。けして犬が恐いわけでは無い。ただ、犬の眼差しを見るのが怖いのだ。特に、橇犬としての訓練をされ、人の為に使役する事に慣れたスネークの犬達を、オタコンは見ている事さえ辛かった。
シャドーモセスにいたのは、ハイパーセントのウルフドッグだった。ここにいる犬達とは、一線を隔した存在である事は判っている。だが、姿形はハイパーセントもシベリアンハスキーもアラスカンマラミュートも、オタコンの目には同じように大きな犬に見えるのだ。
午後の昼寝からも、オタコンは犬達の声に起こされた。いつにも増して騒がしいい犬達の声に、オタコンも様子を見に行こうかと思ったが、吹雪とまではいかなくても降り出した雪に止めてしまっていた。
今は暗闇の中に犬の声がしている。
オタコンは雑誌を置いてブランケットに包まった。今日、スネークが帰って来なければ、このまま眠ってしまえる……。
自堕落に暮らす事を目的にしている訳では無かった。だが、オタコンは深い脱力感に苛まれていた。NPOを立ち上げてはいたが、実質的な活動が出来るような資金を融通してくれるスポンサーも見つからず、仕事は定期的にペンタゴンにハッキングする事くらい……、オタコンは自責の念から立ち上げたNPOではあったが、自浄作用はまだ発揮されていなかった。
うとうととしかけた時に、スノーモービルの音が聞こえた。流石にスネークでもここで寝ている自分を動かす事は無いだろう……、オタコンは目を閉じた。
スネークは納屋にスノーモービルをしまうと、荷物を下ろした。クラーボックスに入れた肉や魚、紙袋一杯の野菜類、オタコンに頼まれていたチョコレートバー、それらを担いで家に入ろうとしたスネークは犬達の鳴き声に足を止めた。
外出から帰ってくる自分を、犬達は確かに待っている事が多かったが……、今日の鳴き声は少しそれとは違っているようだ。
犬達に近づいたスネークの顔が険しくなった。
鳴いている犬達の真ん中に、横たわったままの犬が一頭いる……。
「クウェリ……」
梢に積もる雪のように真っ白な雌のハスキー犬だった。もう、橇を引く事は無かったが、ここの犬の中にも彼女の子供は何頭かいた。高齢だった為に、スネークも心配していたのだが、……眠るような穏やかな顔は、スネークを見ても嬉しそうに鼻を鳴らす事は無かった。背中の薄いグレーの毛を撫でると、何時間か前には苦しみから解き放たれていた事が判る……。
スネークがクウェリの体を抱き上げると、他の犬達はスネークの足元で遠吠えを上げた。
「大丈夫だ、…遠くに言ったわけじゃない。彼女はみんなの側にいるだろ?」
スネークの声に、犬達は一層悲愴な声を上げた。
冷たくなったクウェリを抱いて、スネークは庭の樅の木の下に行った。
「お前達の家の側に眠って貰おう…」
スネークが雪の上にクウェリを横たえると、犬達は遠巻きに見守るようにしながら、長く尾を引く声を上げた。
暖炉の前で丸くなっていたオタコンも、中々家に入って来ないスネークや、一層大きくなった犬達の声が気にかかった。
……何かあったのだろうか…?……。オタコンが立ち上がって窓辺に行くと、スコップで樅の木の下を掘り返すスネークの背と、……雪の上に横たわる白い犬が見えた。
「…え……だって……」
確かにスネークに犬の様子を見て欲しいと言われたが…、具合が悪い犬がいるとは言われなかった。死んでしまうような犬がいるなら、オタコンだってちょっとは犬の様子を見に行ったはずだ。
「だって…何も…」
オタコンは窓枠を握った自分の手が震えている事に気付いて、その手を胸の前で握り締めた。
遠吠えをする犬達の声は、オタコンの耳にシャドーモセスで聞き慣れた声を思い出させた。
……ウルフ……。
真っ白な雪の上に……、横たわっているのは彼女では無いのに……。オタコンはがたがたと震える膝で窓を離れた。
……悪い事が起こったよ………。
自分の周りに起こる不幸は、何かしら自分が引き起こしてしまったような気がする……。オタコンはブランケットを被ったままリビングを出て階段を上がった。
震える膝のせいで何度も階段から落ちそうになったが、…スネークが家に入って来た時に、どんな顔をして何を言ったらいいのか判らない。転げこむように自分の部屋に戻ると、オタコンはベッドの中に逃げ込んだ。
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