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拍手下さった方、ありがとうございますv


↓乙女オタコンです

 オタコンはベッドに座ったまま微動だにしていなかった。
「オタコン」
 スネークはサイドテーブルにジアゼパムとミネラルウォーターのボトルを置いた。
「…ありがとう………ごめんね、スネーク」
 薬を置いて出て行こうとしたスネークを、オタコンは引きとめた。
「…クウェリにも…僕、謝らないと……」
 俯いて言うオタコンの隣に、スネークが腰を下ろした。昨日まで…、ついさっきまでは何とも思わなかった距離だが、オタコンはスネークの体温を腕に感じて、小さく身じろいだ。
「お前さんが責任を感じる事はないさ。彼女は高齢だった。彼女の息子たちも最後は一緒にいられたしな」
「でも……僕、スネークに犬を見てくれって言われたのに、……ごめん……」
 犬が少し怖かった…。オタコンは小さな声で言うと、ますます俯いてしまった。
「…そうだな。まだ辛いな」
 スネークの手が、オタコンの髪をくしゃくしゃと掻きまわした。いつまでもウルフの事を引きずるなと言われるかと思っていたオタコンは、少しほっとした。
「後で、気が向いたら、ウッドデッキの前の木の所に会いに行ってやってくれ。彼女もお前さんの事は気に入ってたからな」
「…うん……」
 ぽんぽん、と、スネークはオタコンの頭をたたくと立ち上がった。
「俺は納屋の修理をしてくる。薬を飲んだら、少し休んでろ、いいな?」
「僕も手伝うよ」
 何か、…誰かの役に立ちたかった。
「今日は休んでろ。昨日だって寝てないんだろ?」
 スネークは……オタコンのくしゃりとした髪の感触が名残惜しかったが、手を放した。
「ごめん…僕、役立たずだね…」
 留守番一つまともに出来なかった…。オタコンは上目使いにスネークを見た。
 …オタコンが恋に気づいてしまった男は、いつもと変わらない様子でオタコンに片手を振った。
「向き不向きがある。俺に出来ない事は、オタコン、お前さんがやるんだ。俺はお前さんの出来ない事をする」
 先は長いのだから、持ちつ持たれつだと言って、スネークは部屋を出て行った。
 オタコンはしばらくスネークの後ろ姿の消えた方を見ていたが、のろのろとミネラルウォーターのボトルを取ってジアゼパムの錠剤を口に含んだ。
 スネークがこんな自分にも呆れなかった事は嬉しかったが……、自分が抱いている思いに気づいた時も、同じかどうか……オタコンには判らなかった。短い付き合いではあったが、スネークがヘテロセクシャルだという事はオタコンにも判っていた。
 ここに来てからも、買い出しの時には馴染みの女性の所に寄ってくるような事もあるようだった。
 以前、オタコンも一緒に買い物に行った時に、あからさまにオタコンを邪魔者のように見た女性がいたのだ…。
 恋人とか言った関係ではなさそうだったが、彼女がスネークに向ける眼差しにはセクシャルなものが含まれていた。今日は連れがいるから帰ると言ったスネークの口ぶりからも、時間が合えばそういった関係を持つ間柄なのだろうとオタコンにも察しがついた。頭が良いとか、何か特別な技能を持っているように見える女性では無かったが、ふんわりとカールした長い赤毛に、オタコンが思わず赤面してしまった大きく胸元のあいたブラウス、…それらは男の目から見れば魅力的なのだろう……。
 そう思うと、オタコンは情けなくなった。
 自分の貧弱な体や、日にも焼けない肌にコンプレックスを持った事はあるが……、ミツバチのように括れた体に嫉妬する日が来るとは思ってもいなかった。
 スネークは…彼女をどんなふうに抱いたのだろう………。
 オタコンは顔が熱くなって、思わず毛布の中にもぐりこんだ。
 スネークの腕が、あの体を抱いたのだと思うと、はっきりとした嫉妬がオタコンの中に湧き上がった。つい今しがたオタコンを抑え込んだ力強い腕が、厚い胸板が、彼女を抱いたのだ……、そう考えただけでオタコンは目眩がした。
 …もしも、スネークが僕を………。
 スネークの裸の胸に抱かれる……、自分の貧弱な体をスネークが抱く事などはない……。オタコンの頭の中に二つの言葉が渦巻いた。
 毛布の中で自分の体を抱きしめて、オタコンは震えていた。

 スネークの事が好きなんだ……、僕、スネークの事、好きなんだ………。

 それだけは、抗いようもない事実だった。 
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