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拍手下さった方、ありがとうございますv



↓スネオタのお初までのお話です。

 外では犬達の声が小さくしていた。オタコンはまだ犬の声に悲しい思い出を重ねてしまう。ベッドの中で耳を塞いで、小さく体を丸めてみても、犬の声はオタコンの頭の中に響いていた。
 ……狼はイヌ科の生き物だけど…あんな風には鳴かないんだ………。狼は飼い主を恋しがって鳴いたりしない、遠吠えは聞いた事があるが……ウルフを呼ぶ声は聞いた事が無かった。
「……駄目だ……」
 暫く留守にしていたスネークの気配に、橇犬達は少し甘えた声で鳴き続けている。オタコンは眠る事を諦めて、ベッドの上に起き上がった。
 サイドテーブルから眼鏡を取って、暗がりでスリッパを探した。
 シャドーモセス以来、オタコンは暗闇に眠る事が出来なくなっていた。大凡、オタコンも人並な暮らしはしてこなかったが、シャドーモセスは極限状態と言ってよかった。自分の責任で生まれてしまった大量破壊兵器、メタルギアが出来上がってしまってからは、オタコンに安らかな眠りは無かったのだ。いつ、それが戦闘配備されれしまうのか……、量産化が進んだら…、煩悶に睡眠は奪われた。
 今は、スネークと共に反メタルギアのNPOを立ち上げて、少しはその罪悪感から逃れる事が出来たが、相変わらずオタコンの眠りは浅かった。
 オタコンは自分の部屋を出て、階下のキッチンに向かった。
 シャドーモセスから脱出した後、オタコンはスネークが以前住んでいたアラスカの家に来ていた。元々が家族用に作られた家をスネークが買った為に、ここには4人家族が楽に暮らせるだけの部屋があった。
 暫くはホテル住まいをした後で、どこかに部屋を借りようと思っていた二人だったが、……結局はスネークのナノマシンがある限り、どこにいても同じだと言う結果になったのだ。不特定多数の脅威からは身を隠せるが、合衆国は未だにスネークを所有したままでいるのだ。ならば、ホテルなどで他の客に迷惑がかかるよりは、スネークの持ち家があるなら使おうとオタコンが言ったのだが、スネークもそれには反対しなかった。反対しなかった理由の大半は、今、オタコンの眠りを奪っている犬達の為なのだが……。
 階下に下りたオタコンは、リビングから洩れる青白い灯りに足を止めた。
「スネーク?」
 分厚い木のドアにはめ込まれたガラスから漏れていたのは、テレビ画面の明滅のようだった。
 スネークは暖炉の前の床に寝そべり、寝息を立てていたが、テレビはずっとついたままだったらしく通販か何かの番組ではにこやか過ぎる男がスチームアイロンを片手に早口にしゃべっていた。
「…君、伝説の傭兵なんだよね」
 涎は垂らしていないが、誰かが部屋に入っても目を覚まさない様子にオタコンは呆れた声を出した。
 シャドーモセスにいる間、オタコンはスネークが怖かった。自分とはまるで違う世界の生き物。オタコンにはスネークはそんな風に見えた。暴力で人を従わせる……、オタコンには彼はそんな種類の人間に見えた。FOXHOUNDには、本当に殺戮が好きで、それだけの為に入隊を望んだような者もいたが、…オタコンはスネークの事も同じように思っていた。
 オタコンは眠ったままのスネークに、カウチに掛けられたブランケットを取って掛けると、テレビを消してキッチンに向かった。リビングに灯りが無くなると、外の犬の声が小さくなったように感じた。
 ……あの人の家族も…あの人にはこんな風に甘えたんだろうか……。高貴とも思える美貌のスナイパー、オタコンの恋した人だった。ウルフは狼犬を家族と呼び、ペットとしては扱わなかった。自分が飼っているのでは無く、自分も群れの一員のようにしていた。オタコンは狼犬に向ける彼女の眼差しに、嫉妬を覚えていた事を思い出した。
 強くて美しかったウルフ。
 だが、その強さは自分自身をも傷つける。実際のウルフは、抗不安薬を飲まなければ銃を持てないような弱さも持っていた。強さとは相反するようなその脆さ、それもオタコンには美しく感じられた。他者を傷付ける事で、自身も傷ついてしまうウルフを、彼は愛していたと言っても良かった。
 オタコンはそうした感情とはあまり縁がなく生きて来た。
 女性に対しては、常に臆病になっていた。恋愛と言う感情より、彼はセックスが怖かったのだ。彼は性的虐待の被害者と呼べるかも知れなかったが、彼自身がそれを虐待として受け止めていなかった。父親から妻を奪っていた……、オタコンには自分が虐待されたと言うよりそうした気持ちの方が強かった。拒否する事が出来ない年齢では無い、そう言われても仕方がないが、オタコンの精神はその知能に比べて幼かった。特に、異性関係に関しては、まるで子供と言ってよかった。
 ……子供のする事の全てが許される訳では無い……。オタコン自身も自分が子供であった自覚はあるが、父の死を前にして、子供だから悪くないとは思えなかった。
 キッチンに入ったオタコンは、ガスレンジにミルクパンを掛けた。ここに来るまで、ホットミルクを飲みたい時は電子レンジに入れるだけでよかったのだが、スネークの家には石窯はあっても電子レンジは無かった。
 吹き零れないように見守りながら、オタコンはミルクの甘い匂いに一つ欠伸を漏らした。
 ……これを飲んだら眠れる………。言い聞かせるように、オタコンは温まったミルクをカップに注いだ。
 キッチンのテーブルに座って、ふうふうとカップを吹きながらオタコンは目を閉じた。
 ……牛乳に含まれるタンパク質はモルヒネ様ペプチドを作る……。毎回の事なのだが、おまじないのようにカップの中に呟いてオタコンは温かいミルクを飲んだ。
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